REP0164.TXT
04th APR.'96

隊員報告書

第D号(24カ月目)                   平成8年4月4日提出

ヨルダン国派遣  平成5年3次隊  職種 電子機器  (7年4月/7年10月分)

  エンドウ ヒロシ      配属先・住所 Jordan Electricity Authority (電力庁)
氏名 遠藤浩史        Head Quarter, 7th Circle, Zaharan Street



業 務 内 容

(A)延長後の活動

a)延長に伴う業務計画

 詳細は以前提出した業務計画書に譲る。具体的な活動内容はそちらを参照して頂きたい。概略としては以下の通りである。
 以前に提出してある隊員報告書の第1号から4号までに書いた通り、本来の派遣の目的であったELECTORONICS_WORKSHOPにおける修理のための活動は、自分の赴任以前より所内で独自の努力を図り、この目的はほぼ達したものと考えている。
 ところがこの際の機器の導入に伴い、配属先ではパーソナルコンピュータのネットワークを構築して、更なる業務の改善と円滑な業務の遂行を希望している。このネットワーク構築の業務を機に本庁の技術計画部電算情報課からも技術指導などの協力を求められており、現在は小規模ながらこれを引き受け電算情報課も活動を行っている。しかしここでは、より多くの深い技術的協力を求めている。
 これらの2点の業務計画のうち、コントロールセンタでのネットワークの構築については、利用の方法が極めて芳しくなく、技術的な問題ではなく道徳的な問題が多くいためにこれが実施の壁になっているとの結論に達し、その旨を配属先に報告書として提出した。やや技術的な問題点を加えると、今日(1996年4月)の段階でWindows95のアラビア語版がリリースされておらず、またWindowsNTはアラビア語版の発売が予定されていないために、今後しばらく(少なくともWindows95のアラビア語版がリリースされるまで)は実際の配備は見合わせ、先に配属先に提出した実験結果の報告以上のことは行わない。
 従って、当分の間はもう一つの業務である、電算情報課における技術指導を重点的に行っていく予定であり、実際の所属をコントロールセンタから本庁の6階に移した。


b)担当業務の一般状況

 所属の変更に伴って、本庁の技術計画部電算情報課における業務内容等について触れておく。電算情報課は配属先である電力庁の本庁ビルの最上階(6F)にあり、電力庁内の全てのコンピュータを維持,管理している部門である。技術計画部の1部門にあり、自分が所属しているのは技術情報課である。ここではコンピュータ導入に関するカウンセルから、導入機器の選択や導入後の設置立ち上げ、利用方法の教育や啓蒙活動、不具合発生時の解決や保守を行っており、簡単に言うとコンピュータ関係の仕事は何でも行っている。
 自分の技術分野は、直接に製品であるコンピュータを扱う物ではなく、これらの機器を応用した制御が本来の専門分野ではある。(勿論中央演算処理装置(CPU)を応用した設計は専門である。)しかし幸いにPCにおいてはここの職員よりも多く知識を持ち合わせているので、充分以上に活動が出来る。同僚は5人でそのうち1人は女性である。みな優秀で、業務遂行のための十分な知識を要している。また、コントロールセンタの職員と比較すると数倍も社会人としての意識が高く、仕事に対する責任感が強い。
 ここでの自分の実質的な活動は、PCのメンテナンスの指導が中心である。更にコンピュータを応用した機器制御の技術の説明等も求められており、これも時間の許す限り進めて行きたいと考えている。


c)その他
 これは直接自分の業務ではないが、現在養護隊員の派遣要請が出ている盲学校において国連からの援助による点字表示装置の維持管理の手伝いを行っている。現在はまだ始めたばかりでどのくらいの労力を要するか不明確な部分があるが、日常の業務の遂行の妨げにならない程度の時間をこちらの仕事に充てて行きたいと考えている。配属先である電力庁もわずかの時間であれば、との条件でこちらの手伝いをすることを許可してくれている。実際には1週のうち3〜4時間程度で充分と考えている。また、本年末くらいまでにはある程度の見通しをつけて、手を放せられれば良いと考えている。

 ここに入った装置はIBM互換機と点字用の専用表示装置の組み合わせである。PCが台湾製(ACER,i486DX2_50MHz)のものだが、点字用の専用表示装置はドイツ製の物である。この専用表示装置はその構造が極めて簡単で、PC側に組み込まれたデバイスドライバがCRTの表示情報をRS-232Cを介してこれに伝えて、点字を表示する仕組みになっている。この点字表示用のパーツが特殊な以外は、極めて単純な構造である。静電式のソレノイドになっていて、小型で効率よく配置出来る用になっている。技術者としては大変に興味のある所である。
 この様な特殊用途向け製品はその構造や内容に比べて、価格が高く余り感心しない。自分が以前に設計していた産業用の機器の様だ。いかにも手作り的な仕上がりで、概観のデザインも操作スイッチの真上に電源スイッチがある等、配慮の足らない設計である。しかしソフトウェアは柔軟性に富んでおり、かなり細かい使用までカスタマイズ出来、良い設計であると言えよう。但し、マニュアルがあまり詳細には記されていないので、多少の知識又は経験が無い者には少々扱いが難しいかも知れない。

 ここに派遣される隊員に必須の条件として "DOSの知識" があるのだが、今日まで見ている限りでは、この代理店の技術者は比較的レベルが高く、十分なアフターケアが期待出来ると考えられる。従って状況を説明出来る語学力さえ身につけていれば、あまり深い知識を持ち合わせていなくても十分に対応出来ると考えられる。ただしコンピュータに興味を持って接せられることは必須であるが…。

 この活動については、報告書第E号、または専用の報告書を作成して出来得る限り詳しく記し、派遣要請の出ている隊員の参考になるような報告をまとめたいと考えている。


(B)専門業務以外の活動

a)人形劇の公演

 前号もやや触れたが、子どものための人形劇の公演をヨルダン国内の全てのエリアを対象に行っている。最近のヨルダンの隊員の傾向としては、この様な活動にはあまり積極的に参加しない様に感じられる。また派遣隊員が減る傾向にある今日の状況から、隊員以外の在留日本人からも広く参加者を募って活動を続けているが、人員の問題は常に問題である。今後の活動の進路を再考する時期に来ている様な気もする。しかしながら、在ヨルダン国日本大使館をはじめ、商社の方など、多くの在留日本人の協力は絶大なものがあり、感謝することに尽きない。
 もともとこの活動が、隊員の有志等が自らの意志を持ってはじめた活動である。自分を含めた現在の参加者全員も、その意志を周到して活動しているわけである。しかし多くの隊員達が、この参加意志に賛同出来なくなり、活動の継続が難しくなったときに、意志を持たない隊員に懇願してまで続けて行く必要が果たしてあるのかどうかは大きな疑問である。
 先日、この活動の創始者の方に会う機会があり、色々と話し伺った。結局のところは、この様な活動はその時代時代に応じた適当な形に変え、最も適切な物を行うことが大切であろうとの結論に達した。今後どの様な活動に変えて行くか、まだ決められないものの、活動そのものが過渡期に来ていることには間違いが無い。何らかの変化に迫られている感がある。


支 援 体 制

a)配属先の協力状況
 コントロールセンタでの活動において、その協力状況は比較的芳しくない状態であったと言えよう。と言うのは、こちらの協力の提案に対して配属先の一部の職員が否定的であり、相手の意向を無視してまでこちらの意志を押通して活動を行う必要を感じないため、適当な距離をおいた程度の協力であった。
 実際にはかなり積極的に私の技術指導を求めた職員が数名程いたが、職場上長からその様な指導は必要無いとの指示があり、実施が出来なかった。配属先の制御所長等にこの指示の改善を求め、技術指導の実施許可を得たものの、実際は職場内で実施の許可を得られず、実行には移せなかった。また、これらの職員も勤務時間外にまではこの様な技術指導を望む程ではなく、結局のところは実行出来なかった。
 一方、本庁ではまだ余り時間的に長く活動をしていないが、技術的に求めているものが自分の技術分野に適合しているので、十分な協力が行えるものと期待出来る。またここの職場の職員は比較的積極性を持って技術協力指導を求めており、協力活動の効果が充分期待出来得ると感じている。

 機材協力の必要性については、まだ具体的な状況を掴みきれないが、補修用機材や治具が不足している様な気がする。彼ら自身があまり必要を感じていないのか、欲しているものの入手が阻まれているのかがわからないが、これらの機材は修理点検のための必要な道具でありあった方が良いに違いないと感じている。製作可能なものは自主的な作製を行える様にして行きたい。

b)業務上の問題点について

 当ヨルダン国では、業務内容に境界線を引き、職種の区別を付けたがる傾向にある。従って、計算機関係の技術者と電子関係の技術者とは、違う技術を持っていると言う認識が強い。しかし現実には、たとえソフトウェアの開発を行う場合であっても、どちらの技術者とも、ディジタル,アナログ,ハードウェア,ソフトウェアの知識が区別無く必要である。やや技術的な言い方をすれば、CRTコントローラや、DAコンバータはそのハードウェアや、アナログ特性を知らないでプログラミングを行うとICを破損する。最近のICは基本性能に対して充分なマージンで設計されているので、なかなかに壊れないため、この様な危険を感じない技術者が増えている。しかし、スペックを超えた設計は、部品メーカーの保証を一切受けられないし、そのような使い方をしてはいけない旨がデータシートには必ず記載されている。扱っている機器は民生品ではない。知識無しで機器を操作して破損した場合は、明らかに操作者の責任である。
 配属先の職員はアナログ関係の知識が著しく乏しく、また、あまりその有用性を認めていない。そのため保守点検作業で様々な危険な状況を招くことがあり、故障の原因を増やしてしまいかねない。この様な事態を防ぐために、多くの技術的知識の教育、啓蒙を行う必要がある。

 以前、隊員支援経費でコントロールセンタに導入したコンピュータの扱いについて問題になっており、やや不快に感じている。
 購入した機材は隊員支援経費にて購入しているので、本来ならばその所有権はJICAにあり、その管理を隊員が委託される形を採るものとされるべきと理解した。しかし、機材導入の際に免税の手続きを私の配属先である電力庁が行ったために、電力庁の備品として登録されてしまい、利用に制限が設けられいる。この問題は昨年6月に行われた電力庁と電力庁に配属されている隊員との話し合いの際に議題とされ、解決したこととされているが、現実には解決されていない。
 さて、これらの機材のうち、昨年11月頃から故障が発生し、その修理を購入先の代理店に依頼した。ところが代理店は故障の修理を修理できる技術が無いために保証期間中であるにもかかわらず拒否して来た。更に修理を依頼する以前には発生していなかった故障を修理したとのことで保証期間中であるにもかかわらず50JDの費用を請求され、自分が個人的に支払わされ、これに対して領収書の発行を未だにしていない。これらの点には個人的、または配属先を通じて抗議したが、全く対応しない。この台湾のメーカーには非常に不愉快に感じる。
 現在のところ、この故障によって機材の動作が一部制限されている。そこで、自分の任期延長に伴い一時帰国する際に、これを持ち込んで日本国内にて修理することを計画した。しかし、機材の登録場所である中央制御所はこの許可を下さず、また機材の一部を本庁の活動での利用しようと計画をしているがこれもまた意のままにならない。
 これらの機材は、コントロールセンタの業務として必要なものである、是非とも修理が必要であると考えているがコントロールセンタとしては、この問題を全く受け付けない。抗議を申し入れたり、文書にて改善を求めたりするとその時だけ調子の良いことを言って、その後何も実行しない。文書にて返信を貰うように申し入れても、全く対応しない。以前の住居の問題のときと同様で、こちらが100%譲歩するのを待っている様な感じであり、非常に不愉快だ。

c)その他
 先日、ヨルダン北部にあるアジルーンにある風力発電所に行く機会があり、そこでいくつか感じたことがあったので記す。
 この発電所は総発電量が320KWの非常に小さい物で、デンマークの援助で建設された。4発ある発電機のうち現在は3発が稼働中である。この付近一帯の家屋のための発電をになっている。非常に小型の発電所ではあるが、付近の家の電力消費を考えれば充分であろう。
 ヨルダンは天然資源に乏しいが、地盤がしっかりしており、その上荒野の様な何にも利用されていない土地が非常に多くしかも何も遮る物が無いので、この様な発電所を多く設置しゆくのも良いかもしれない。
 さて、この発電所には、気象情報収集用のパーソナルコンピュータがあり、その修理のために立ち寄った。故障の原因は、大地の状態が乾いているせいか接地抵抗が既定値よりも高く、落雷時に避雷せずコンピュータの一部に雷撃を与えたために破損たためだそうだ。しかし、実際には避雷針の高さが、発電用の羽の最高値より低く、避雷針が意味をなさない。
 また、航空機のための警告灯がなく、付近を航行中の航空機(特に軍用のヘリコプタ、付近に演習場があるらしい。)に対して非常に危険である。夜間は何らかの警告表示が無ければ事故が起こりかねない。
 この様な設備の問題は自分の専門技術範囲外であるものの、何か機会があれば対応を考えたい。


一 般 状 況

a)生活環境

 最近特に食品関係の物価が上がってきている。イスラエルとの和平条約を結んでからと言うもの、徐々に上がってきた物価が、ここへ来て驚くほど上がっている。2年前に赴任してきたときに、地元のオレンジジュースが750Filesだったところが現在は1JD以上もする。パンや牛乳、ヨーグルトや野菜などヨルダンの現地人が日常に利用している物でさえもその物価上昇のあおりをくっている。
 パン等はかつて1Kg=80Filesであったのが、現在は160Filesで2倍に上がっている。また、この1月より郵便料金の値上がりが実施されたり、路線タクシーの値段が上がったりで、かなり全般的な物価の上昇である。
 これに対して、一般的な現地人の所得は上がっておらず、配属先でもストライキの噂がささやかれたり、また、他の隊員の配属先でストライキを前提に折衝を行った話しも聞く。近々、公務員全般に賃金の引き上げが予定されているらしいが、実施日が不明確だ。

 配属先の電力庁では、以前から(2年前の赴任当時から)民営化の話しがあったが、最近まで全く話しだけで具体的な言動が聞かれなかったが、最近になり職員に、公務員として他の機関に残留したいか、民間に移行しても今の職場で働きたいかの意思選択の調査書が回って来ていた。職員によって、民間移行を賛成する者、反対する者と別れており、彼らの意思が、今後の配属先の状況決定に反映されるのであれば、最終的な決定までにはまだ多くの時間が必要となるだろう。

b)言葉について
 最近になって語学学習の補助が出るようになり、英語の個人レッスンの受講の助けになっている。以前より語学学習のために多く出費をしていたので、この事務所の配慮には大変嬉しく思っている。
 赴任後2年になって、今までぺらぺらと英語をしゃべっていた現地人のほとんどがインチキな英語であって、「既に自分の方が話せるナ!」と感じることが時々ある。アラビア語の学習を早期に断念し英語のみに専念した結果が、やっと出てきたなぁと言う感じである。勿論、きちんと英語を話している者もいるので、こちらも調子に乗ってインチキ英語で話していると痛い目に会う。
 本来は、現地公用語のアラビア語を話せる様に学習すべきであったかも知れないが、訓練所にて3ヶ月間の英語を学習し、更に現地でも比較的英語が通じる状況なので、自らの語学能力を踏まえて、アラビア語を断念した。近々、訓練所にてアラビア語の学習を開始するとの話しを耳にしているが、早く実現して頂きたい。
 幸いに、この国ではフランス語を話す北アフリカ地域のアラビア語圏と違い、外国語が話せないからと言った差別しは無いようである。しっかりとアラビア語が話せれば英語はあまり重要ではないと感じる。しかし、大学の講義の大部分は英語で行われているので、或程度の知識層は英語が話せなければまずいようだが、前述したように大学卒の技術者でもインチキ英語であったりすることがある。

戻る