隊員報告書
第B号(12カ月目) 平成7年4月7日提出
ヨルダン国派遣 平成5年3次隊 職種 電子機器(6年10月/6年4月分)
エンドウ ヒロシ 配属先・住所 Jordan Electricity Authority (電力庁)
氏名 遠藤浩史 Amman South , National Control Centor
業務内容
(A)中間報告
a)業務進捗状況
配属先からの具体的な業務指示が無く、自ら企画した業務予定内容
に従って業務を進めているが、時折カウンターパートから修理の協力
を求められたり、また別の部署からの要請で助言や手伝い等を行う事
がある。
具体的には、報告書@号,A号に記載した通り、回路設計の指導や、
PCB(Print Circut Board)作製のCAD化の推進、レクチャーの定
期化等がある。
PCBのCAD化については後で詳しく記載するが、その他の2点
については現在下記の理由の為に滞っている。
回路設計の指導について、カウンターパートの一人である職場の係
長より、"配属先の業務内容は修理であり、設計では無い。従って、設
計の知識は全く必要なく、修理の為の指導のみ行って欲しい。"との指
示があった。設計の知識無しに、修理の技術指導を行うことは大変難
しく自分の能力では不可能である。(可能な人がいたらお目にかかり
たい!) 今後、この方面の技術指導は実行不可能である。
レクチャーは過去数回行ったが、受講内容がほとんど理解されてお
らず、実作業にも受講内容がまったく生かされていない。また受講後
にレポートや感想等の提出を要請しても全く解答が無く、レクチャー
そのものの開講する必要が無いと考えられる。
さて、PCBのCAD化については、つい先日の3月30日に以前
より申請した機材が到着した。早々にソフトウェアのインストールに
取りかかっているが、機材に対する意識の違いにより思うようにはか
どっていない。
隊員支援経費にて購入した機材で、供与するかどうかはその利用状
況を見て判断すべきなのだが、配属先はすでに供与されたものとして
現在あるPS2の作業内容をただ移植して利用する事のみを考えている。
その為に目的の作業が滞っている。
また、配属先の一部の職員は、これらの機械を完全に玩具に用いて
機材を本来の目的とは別の用途に用いられ(卑しくも一省庁の職員が業
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務中に行うべきではない様な作業、具体的にはお絵描きツールで、い
たずら描きをしてみたり、ゲームを始めてしまう。)、実作業がはかど
らない。
本庁のコンピュータ部門からも、時々作業の協力要請があって出向
く事がある。
こちらでの作業は、技術的指導やアドバイスの供与であって、むし
ろ本来の協力活動に近い。
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支援体制
(A)支援経費
a)当面支出を必要としているもの
報告書第@号及び第A号にも書いている通り、PCBの作製の合理
化を図る必要があり、その為の機材が必要である。
現段階ではコンピュータの導入がなされ、ソフトウェアのインスト
ール作業が始まったばかりなので、今後いつ頃になるか予定が立て難
いが、ソフトウェアの利用の対する教育の後に、PCBの感光及びエ
ッチング,加工の為の機材導入を考えている。
特に両面のピン間2本のパターンを独自に開発して、基板化出来る
事を目標としているので、現在ある手造りの装置には限界があるよう
に思う為、これらの装置の支援は必須であろう。
b)プロジェクトとして取り組む必要性のある業務の有無及び内容について
配属先(電力庁)では、コンピュータの導入に伴って同時に購入し
たネットワークのカードを利用して社内LANを整備して、インター
ネットとの接続を計画しているようである。
これらの業務は直接、自分の配属されている部署の仕事ではなく、
また個人的にネットワークの構築の経験がない為に簡単に引き受けら
れる類の業務ではない。しかし非常に興味深い仕事内容なので、今後
何等かの形でこれに携わって行きたいと考えている。
もし今後、本格的にこちらの業務に携わる事になったら、かなり大
きなプロジェクトとして取り組む必要があるように感じる。
(B)カウンターパート
a)カウンターパートの質的水準
大学卒のエンジニアはその地位にあぐらをかき、全く仕事をしてい
ない。知識は充分に備えているらしいが、その知識を現実的に示して
もらった事は過去1年間全く無い。
自分にレクチャー等の教育活動を行う様に要求してくるが、これと
いった効果が見られない。また、教育に熱心な割には技術書等は全く
読もうとしない。事実、自分の職場には全く技術書等が置かれていな
く、技術的な向上心の欠落が著しく感じられる。
また、技術的な能力と、それ以外の能力の区別出来ない。たとえば
最新型の測定装置や機器を持っていることが大切で、それを用いて何
をするかは問題ではない。事実、彼らは日常業務である修理の際は、
こう言った機器や装置を使用しない。
これに対して、高卒、専門学校卒のテクニシャンは、その低い賃金
に比べて、能力、技術的向上心はエンジニアを遥かに上回っている。
今後、カウンターパート研修等の機会を利用して技術向上を手伝いた
い。
b)人数
職場の全員がカウンターパートなので9人いる。
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c)カウンターパートの所属先での位置付け
先に触れた通り、エンジニアとテクニシャンに分けられる。
この内、エンジニアの一人が職場の係長で、全体をまとめているが、
彼は数年前まで別の部署にいて、ソフトウェアを専門にしている為に
業務や同僚に理解が無く、ややマネジメントに問題がある様に感じら
れる。
また、テクニシャン達はあくまでも労働力の1つにしか過ぎず、ど
れ程能力があっても、どれ程技術的に優れていても、その地位から昇
格することは無い。
エンジニアは比較的社会的な地位が高く、所属先でもその地位が認
められている。しかしテクニシャンはあまり認められておらず。その
社会的地位はほとんど無い。
こう言った社会構造に口を挟むつもりはないが、現在の自分の業務
は全て、テクニシャンの何人かを育てて行くつもりで行っている。
(C)後任の問題
a)任期の延長の有無と交代の必要性
業務の進行が滞っているのと、新たな業務の可能性があるので、現
在の段階でははっきりしないが延長の必要性はある。特に先に記した
ネットワーク化に関する業務を遂行することになった場合は確実に任
期の延長が必要になってくる。
後任者の問題においては、現行の職場の本来の業務である作業がほ
ぼ問題無く遂行出来ていると思われるので、後任の必要は感じない。
実際の所、配属先は技術協力の名を借りた機材が欲しいだけであり、
また機材の納入の伴う業者からのマージンを期待しているのであって、
人間による技術協力は必要としていない。もし彼らが人的協力を必要
としていて、技術的向上心を持っているならば、もっと普段から技術
的学習を自ら行っているだろう。しかし、現状ではその様な様子は見
られない。
b)交代要員に希望すること
交代要員を必要としないので、無い。
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一般状況
(A)余暇活動
a)余暇の過し方
配属先は週休1日であり、また夏季や冬季に特別な休暇が無いので
それほど余暇が多い訳でもない。また休日も隊員の有志で行っている
人形劇に参加したりしているので、暇をもてあます事は無い。勿論、
日本で働いていた頃の事を考えれば時間的余裕は沢山あるが…。
平日は仕事が3時に終わり、アンマン市街には3時半から4時には
戻って来れる。食事の支度等に時間を裂かれるが、夕べの時間は充分
あり、個人的に自由に使える時間は充分ある。
もっぱらこれらの時間は、趣味の音楽鑑賞や工作、またはヨルダン
人や隊員から依頼された機器の修理等に費やされる事が多い。また、
まれではあるが、帰国後の資格取得の為の学習にあてることもある。
また、隊員の配属先やその他の団体等から、機械の操作や修理の為
に出向く事も多い。勿論これらの手伝いや協力も当然任務のうちと考
えており、今後も配属先との業務の折り合いを見つつ、積極的に行っ
ていくつもりだった。
しかし、過ぐる3月11日に、日本大使館とYMWAと言うこちら
の王室関係の団体の合同主催による "日本文化の夕べ" なる催し物が
開かれた。この際も機器の操作の依頼があり、JICAも協賛の形で
参加する為この依頼を快く受けたが、自分を含めた隊員達の意向が全
く受け入れられず運営が進められた。
しかも当日会場において、出演者の一部より "音響機器の操作に不
手際がある。" となじられ一部聴衆の目前で唾を吐かれたり、また後
日 "ユダヤ人の作曲家の音楽を使用すべきでは無い" との言を日本大
使公邸よりJICA宛に通達される等の常軌を逸した言動があった。
大変残念な事だが、この様な注意を受けたのは今回が始めてであっ
て、特に日本大使館及び日本人関係の団体にはあまり積極的に協力す
べきではないと考えざるをえない。
プロのオペラ歌手がわずか300人未満の小ホールでオンマイクで
歌うとは誰も考え無いし、1000人以上のホールでもノーマイクで
公演するのが一般的だと思う。むしろマイクを入れる事がむしろ失礼
だと考えるのが普通ではないだろうか? また、特にそのような指示
もリハーサル事には受けていない。
また、ユダヤ系の作曲家のクラシック音楽は、こちらのラジオ放送
やテレビ番組の中にも多く使われており、イスラエルとの和平条約も
締結した今日、公式の場でも無いところで何故この様に問題視される
のか意図を掴みかねる。むしろこの発言そのものがユダヤ人差別の様
な気がするが…?
b)任国の人との交際のあり方
電力庁の本庁に、JICAの研修に行った事のあるエンジニアがい
る。彼はイスラム教徒ではあるが、非常に国際的な視野を持っており
協力隊員である自分に非常に親切にしてくれ、またよく"飲み"に誘っ
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てくれる。これはイスラムの中では極めて珍しいことで、彼以外の者
から食事に誘われたり、家へ招かれたりしたことは数多くあるが、ア
ルコールを飲んで話しの出来る人はいない。
しかも、彼のおかげで他の多くの外国人と接する機会が出来て、任
国の人だけでなく、日本人以外の外国人の目から見たヨルダンを知る
機会を多く与えられ、様々な観点からヨルダンと言う国をしる機会が
出来た。
また、職場のテクニシャンにも親しく接せられる者が数人おり、何
度か自宅に招いてもらった。
しかし、イスラム圏において独身の男性が友人の宅へ訪問しても、
女性の家族は一切その姿を見せずに、また酒を酌み交わすわけでもな
いので話題の発展性に欠け、どうしても仕事や社会情勢の話題からは
域を越えない。日本人の感覚では昼間の営業をやっている様で、疲れ
る。
女性隊員の話しを聞くと、必ずしもそうでは無く、より砕けた会話
がなされている様に思う。この辺りの違いは一体何が原因なのか、や
や興味がある所である。
後述するが、この4月から住居を移ったのだが、新しい住居の大家
さんが大変良い人で、色々親切にしてもらって助かっている。
この大家さんはキリスト教徒で、時々食事に招いてもらったりする
が、奥さんや他の家族も一緒に食事をする。従ってあまりアラブを意
識せずに生活出来る。
また、彼は音楽鑑賞が趣味で(ヨルダンで西洋のクラシック音楽を聞
く人は非常に珍しい様で、街のレコード店にもこの類の音源があまり
置いていない。)、時々レコードを聞かせてもらったりしている。
c)生活上の創意工夫について
首都での生活の為か、特に生活上の不自由を感じないので、これと
言って創意工夫を強いられる点は無い。
また任国人の生活で、任地の風土気候に適している様な部分は特に
見当たらず。どしゃぶりの雨が降っても一切雨具を着けず外出する様
等は、マネをするとたちまち風邪をひきそうな気がするので日本人に
は向いていないと思う。
イスラエルとの平和条約締結後、ヨルダン国内はわずかではあるが
基本的な食品に至るまで全て物価が上がり、少ない生活手当に影響を
与えつつある。こういった為に、創意工夫とはやや違うのかも知れな
いが、交通費を削減する為にタクシーで5分,500Filsの道を、バスと
路線タクシーの乗り継ぎ及び徒歩で60分,200Filsと言った節約を強
いられる事が多い。
職場の同僚はほとんど自家用車を持っているので、時々乗せてもら
っているが、住んでいるエリアが違う為に頻繁ではない!
いずれにしても首都での生活は、金額的以外の不自由は無いと思う。
また、創意工夫も日本でのそれと大差無い。
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(B)コミュニケーション
a)公私における外国語の習熟度について
業務中は勿論、日常生活においても、ほとんどが英語で不自由せず
コミュニケーション出来る。勿論、現地語であるアラビア語が話せれ
ばより一層深いコミュニケーションが図れるのだろうが、自分の語学
力で新しい言葉を覚えて、2年間でどこまで話せれるようになるのか
を想像すると、英語で不自由しないならば、継続して英語の語学力を
高める方が良いのではないかと考えている。
さて、その英語だが、駒ヶ根訓練所の入所前に比べれば、勿論数倍
も話せる様になっているのだが、今もって不自由ないかと言えば、ほ
とんどが不自由なので、現在も学習を続けている。
以前は語学学校に通っていたが、費用も高く、その効果もあまり芳
しくないので、現在は個人レッスンを受けている。こちらもさほど安
く無いのだが、対費用あたりの効果がより良いようなので続けている。
今後より一層の習熟に努めたい。
いずれにしても言葉の面が色々と不自由なので、細かい点ではやや
不自由している。勿論、大筋では問題がないが…。
b)住居について
コミュニケーションの項目に記載するのもおかしな感じだが、コミ
ュニケーションの点も、住居の移転になった原因の一つなので、この
項に書くのも不思議ではない。
以前に、配属先より提供のあった自分の住居は、隊員のドミトリの
様な施設で、地方勤務の職員がアンマンに業務または休暇の為に上京
した際、宿泊する為の施設の一室であり、キッチン,バス,トイレ等は
共同の物であった。
その為にハウスキーパーが常駐しており、これらの施設の管理維持
に努めていた。彼は非常によく働き、これらの業務をやってのけてい
た。
しかし昨年の11月より、このエジプト人のハウスキーパーが辞め
新たにヨルダン人が任に就いたが、この新任者は全く働かず、共同の
キッチンやバスなどは使用に堪え難い状況になってきた。またセント
ラルヒーティング等のシステムが壊れても一切修理等を行わず、注意
しても "自分の仕事ではない。" "気にするな!" 等と言うのみである。
職場にもこの旨を伝え、改善を要求したが、取り合ってもらえず、
協力隊調整員を介して配属先である電力庁に依頼した。
しかし一向に改善される余地も無く、この4月からJICAの費用
にて一般住居に移る事となった。
本来、隊員は配属先が提供した住居に住むべきであり、全くその通
りであるが、日常の生活にも不自由する住居であった上に、ドアの破
損等を直してもらえず、雪の降る日に室内に雪の入り込む住居を提供
されても住むに堪えない。
配属先と4ヶ月以上も交渉したが、全く改善の余地が無い為、残念
ではあるが、転居となった。
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