隊員報告書
第@号(3カ月目)                  平成6年7月7日提出

ヨルダン国派遣   平成5年3次隊   職種 電子機器(6年4月/6年6月分)

  エンドウ ヒロシ      配属先・住所 Jordan Electricity Authority (電力庁)
氏名 遠藤浩史        Amman South , National Control Centor



                業務内容

(A)配属先

a)配属機関名: Jordan Electricity Authority (ヨルダン国電力庁)
        Supervisioy & Control Dept. Telecom Maintenance Eng. Section
        National Control Center Electronics Workshop

b)配属先の組織と規模

     電力庁は、約2200人の従業員からなる電力供給事業体である。
    その本庁は地上7階、地下2階の大きなビルディングであり、各所に
    インテリジェント化された装置や機器が多く見られて非常に近代的だ。
    また、各地にある発電所,変電所も充分な新鋭装置,機器を導入してあ
    り、自分の配属されている中央制御所も、途上国と言うには不似合い
    な設備が整っている。また充分に運営,管理も行われている。
     電力庁は、現在政府の機関の一部であるが、独立採算で経営が成り
    立っており近々民営化が予定されていて、一般企業として独立する。

     電力庁の機構は、全体を大きく4つに分割されいる。自分が配属さ
    れている部所はその中の一つ Supervisioy & Control DPT. である。

    職場はTelecom Maintenance Eng.Section Electronics Workshop であ
    り、アンマン南の中央制御所の一室にある。主な業務内容は、所内及
    び所間の通信機器や、制御器の保守、修理を行っている。
     現在、9人のスタッフと、ヤルムーク大学からの3人の研修生がお
    り、業務に携わっている。スタッフはみな優秀で、充分な人材を有し
    ている。


c)日本人を含めた外国人スタッフの有無及び役割

     自分以外の外国人は無し。
     ただし設備が外国製の製品なので、スタッフは渡航経験が多い。ま
    た出入りの業者も外国人が多い。






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(B)協力活動

a)今後2年間の決意と心構え

     自分の職場は、主に通信機器の修理点検が仕事であり、機器の不具
    合を改善することも日常業務だ。この点については皆優秀で、技術的
    にも経験的にも優れており、自分の指導が及ぶ所がない。スタッフの
    中には特に優秀な者が数名おり、彼等が実質的なイニシアチブをとっ
    て業務が進められている。また測定機器、計測機器は充分備わってお
    り、日常の業務はほとんどこれらで支障無く進める事が可能だ。
     これらの業務において、前任者が等価回路の設計製作の指導を行っ
    ており、充分に根付いている様に思える。しかも独自にCAD化を推
    進しており、かなり高いレベルへと成長している。が、機材や他の問
    題があり、日本のアマチュアレベルよりも劣る部分が多々ある。また
    CAD化もCAMレベルまで拡張出来るツールを有しながらも、電子
    ドラフタのレベルを脱していない。
     また、電子回路の個々の動作原理は理解しているが、総合的に組み
    合わさった装置を理解するには到らない。制御用のマイコンが破損し
    た際にインサーキットエミュレータ等を用いて原因を捜す事が出来な
    い。(実際にICEは無いが、汎用のPLCで充分対応出来る。)
     これらの事を加味する、業務は大きく3つに分割出来、以下の様に
    なる。

      1.)CAD化の推進の援助:
         ここで用いられている回路図エディタは世界的に非常に普及し
        たもので、これによる回路設計は自分にも経験がある。
         さらにboard化に当っては回路図エディタから自動的にレイア
        ウトを施してくれるソフトウェアを既に有しており、自分は
        この経験はないが、トライして作業の軽減をはかりたい。
      2.)啓蒙活動:
         職場から講義の依頼を受けている。現在言葉が侭にならな
        い為、先延ばしにしているが、来月より開始の予定。
         ここのスタッフは基礎的な事は知っていると言っているが。
        疑わしい部分もあるので、目新しい事をやってから、徐々に
        そのレベルを探って行きたい。
         基本的には独力で回路設計や製作を可能にすることを目標
        とする。
      3.)PLCの設計製作と指導:
         汎用インサーキットエミュレータを職場と共同で作製し、
        マイクロプロセッサの故障修理に役立てたい。ただし、これ
        は 1.)項や 2.)項の延長的色合いが濃く、回路設計のトレー
        ニングとして要素か多いと考えている。

     職場からは、他にも多数、測定器,治具等の製作を依頼されているが、
    彼等独自の設計製作の必要を感じる。製作の指導は出来るが、自分自
    身で作製してしまう必要は無いと思う。
     また、詳細は別の機会に譲るが、等価回路設計の限界があり、この
    問題の解決にも微力ながら挑む所存だ。



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                支援体制

(A)受入体制

a)隊員の配属先での位置付け

     技術者(Engineer)。
     具体的な位置付けは、技術相談役と、新型機器のインストラクタの
    間の様な感じで、一般の技術者とは若干性格の異なる位置付けになっ
    ている。職場でCADのプロッタ出力を可能にした点を買われてか、
    本庁のコンピュータセンタに出向きプロッタ出力の応援に行くことも
    ある。現在はコンピュータのシステムコーディネータ的要素が強い。
     現実に職場では、自分がいなくても業務は滞りなく進められており、
    あまり多くを期待されておらず(必要とされておらず?)業務の依頼
    はあっても納期は無く、業務内容の変更(設計仕様の変更)を依頼し
    ても、あっさり許可されてしまい。一体どういう立場なのかいささか
    理解に苦しむ点もある。


b)予算的裏付け(任国の予算措置状況・JOCVの支援資金)

    ◎任国の予算措置状況:

     ヨルダンはその国力にほぼ見合う程度の電力需要があり、供給事業
    もほぼ安定して行っている。更にシリアに電力を輸出程の余剰電力を
    持っている。
     電力庁は、現在政府の機関の一部であるが、独立採算で経営が成り
    立っており、近々民営化が予定されていて、一般企業として独立する。
     しかし、電源のほとんどが火力で、燃料となる油がすべて近隣のア
    ラブ諸国からの援助で成り立っており、この安定も表面的なものであ
    る事が窺える。先の湾岸戦争の際に、ヨルダンはイラク指示の立場を
    取った為に一時援助が減少し供給に陰りがあった事がこれを裏付けて
    いる。

    ◎JOCVの支援資金:

     前任者が僅かな部品と基板、それに日本の少年向け製作雑誌を置い
    て行った程度で、これと言って具体的な物的援助はない。しかし前任
    者の技術援助は着実に根付いており、現在ここの職場では、確実にこ
    の成果が出て来ている。
     彼等は独自に技術的なレベルアップを図り、その結果、既存の手作
    りの装置では業務の進行に支障を来たす程に成長している。
     参考に現在製作中のPCBのCAD出力を添付する。もはや手で基
    板を起こすレベルを越えていると思う。今後の援助の対象としてこう
    言ったPCB製作装置を期待している様であり、その程度は充分可能
    な範囲ではないか?と思っている。
     また、CADを起動させているコンピュータはIBM_PS/2で、これも
    多く問題を抱えている。この問題の詳細はまた別に機会に記すが、い
    ずれにしてもなんらかの措置は取れないかと考えている。支援は期待
    されているが、応ずるかどうかは検討の余地がある。

                    1−3




c)計画

     現在、既存の基板のプロッタ出図と、製作の支援の他に、CAD実
    用化の為の周辺整備を行う一方で、これに関する講義の準備を進めて
    いる。
     今後は、CADの実用化、基板の量産の為の指導を中心に指導を行
    うつもりだ。また一方で技術的不足事項の補填を、講義や実務を通じ
    て享受出来れば良い、と考えている。

     CADの実用に伴い、PCB作製用のアイテムが幾つか必要になっ
    てくる物と思う。たとえ"PIN間1本"の基板でも、感光の際に白熱電球
    を用いていてはムラが出来る。その上、ビーカーを電熱器で熱してエ
    ッチングを行えば、歩留まりが上がらないのは明白だ。

     PCB作製用のソフトウェアの組み込み用にPC/AT互換機が必要にな
    ってくるかも知れない。現在その必要性を検討中だがPS/2の周辺を強
    化しても実用には及ばないと思う。また、他のソフトウェアとの互換
    をかんがえるとPC/AT互換機が必要になる。

     Programable Logic Controler の製作に関しては半年から1年位の
    間、様子を見て、その後考えたいと思う。この場合パソコンベースで
    開発,製作する方が容易なのでオープンアーキテクチュアのパソコンが
    あると製作は簡単化される。


d)隊員の住居手配状況(@相手国側が手配した場合 A隊員自身が手配した場合)

    @相手国側が手配した。

     配属当日にレストハウスの一室を宛行われた。ここは、地方勤務の
    職員が本社に仕事の為に上京した際、宿泊する為の施設で、台所やバ
    ス,トイレは共用である。管理人が同居しており掃除等をしてくれる。
     自分の部屋は6階建てのビルの5階にあり、西向き6畳くらいの部
    屋である。ベッドが2つに箪笥が一つの所で、現在本棚がなくて不自
    由している程度だ。
     窓からの眺めは良く、夕日や夜景はきれいだが、西日が暑い。
     他に二部屋、別の部屋があって電力庁の職員が頻繁に出入りしてお
    り少々周りが騒がしい。休日以外は常駐している職員もいる。
     管理人や同居人が深夜2時、3時までテレビを見ているので、夜間
    は非常に騒がしい。また、冷蔵庫にジュース等をしまっておくと無く
    なる。

     立地場所は、電力庁の本庁社ビルのすぐ近所にあり、ヨルダンでも
    高級な商店街が近く買物をするには何ひとつ不自由は無い、ただし若
    干値段が高い。
     職場までは、およそ15Km位離れており、通勤は近所のバス停まで
    行き、そこから庁の自動車に乗り合いで10〜15分位かかって通勤
    している。乗り合い自動車を利用しない場合、バスを乗り継ぎ1時間
    位かけて回って行かねばならなくなる。
     ダウンタウンや繁華街には、バスや乗り合いタクシーで安価で行く
    事が出来て便利がよい。
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                一般状況

(A)任国事情

a)任国の印象

     ヨルダンは、比較的発展した国だと感じた。出発前に聞いていたの
    であまり驚かなかったが、首都アンマンではかなり色々なものが、多
    くあることには多少驚いた。 しかし、ほとんどのものが輸入品で自
    国で生産されている物は皆無に等しい。これは全てのものを援助に頼
    っている証で、これら全ての発展が虚構である事は否め無い。
     これは通貨,貨幣が事実上不足していることからも窺える。物が豊富
    な商店で買物をしても釣り銭が無いといった奇妙な現象がここでは一
    般的だ。

     気候は大変住み易く、多少ほこりっぽい事を除けば全く問題がない。
    特に任国到着直後は気温も温く、日差しもさほど強く無くて大変に過
    ごし易い日々が続いた。
     特に問題になる伝染病や風土病も無く、生活するにあたっては不自
    由する事は無い。
     治安も割と良く、町の述々に自動小銃を持った警官がおり、犯罪は
    ほとんど無い。また軍関係の施設も多く、装甲車や特車が数多く見ら
    れる。

     イスラム教の宗教色は比較的薄いが、国王が預言者の子孫であり、
    国の宗教としてもイスラム教が支配しており、国民はほとんどイスラ
    ム教徒である。自分の職場はほとんどのメンバーが海外への留学の経
    験があり他の国(世界)を知っているが、それでもお祈りだけは欠かさ
    ず行っている。国民はイスラム教こそが絶対で、他は正しくないとい
    った排他的かつ唯我独噂的な幼稚極まりない考えを、心の奥底に持っ
    ている様で、現実に何回かイスラム教へ改宗する様に勧誘された。こ
    の様な時は必ず他の宗教は間違っており、イスラム教だけが本当の宗
    教だ!と言ったマンガの悪者みたいな事を、いい大人が真顔で言うの
    には少々とまどってしまう。

     この国は血縁関係が非常に強く、就職関係、結婚関係はほとんどが
    縁故でなっている。ヨルダン人はその血の繋りから良い職に就けるが、
    パレスチナ人は必ずしもそうとは限らない、しかしこの国ほとんどが
    パレスチナ人で、彼等は自分達こそがこの国を作りあげたと思ってい
    る様だ。現在パレスチナはイスラエルとの確執がある故に他のアラブ
    の国々に従じているが、実際のところは、あまり良く思っていない様
    だ。
     ヨルダン人はいわゆる"3K"の仕事には就かず、この様な労働はほ
    とんどエジプト人が行う。決してヨルダン人が外国人労働者を雇って、
    自分達が楽出来る立場ではないがここでは当り前の様にその様な構図
    が見られる。

     何故、ヨルダンという国がこれ程までに恵まれ、アラブ諸国や、西
    欧諸国から援助を受けられるのかが、良く解らない。この点の解明は
    今後の課題なのかもしれない。
     だが援助をあてにして働かない、しかも援助を打ち切られたり削減
                    1−5a




    されたりする事は全く考えていないヨルダン人達は、与えられるもの
    をただ受けとって居るだけの様にしか見えない。自助努力のかけらも
    無い。
     彼等の一部(小数ではない)は、先進国以上の暮らしに慣れ親しん
    しまって、援助の無い暮らしは考えられない。それ程までにヨルダン
    人を援助し、助けねばならい理由があるならば、彼等自身でそれが恒
    久的なものであるよう努力せねばならないはずだ。もし地理的要因で
    その様な理由があるならば、つまりイスラエルの燐国であるという理
    由で援助の対象になっているとしたら、実に恐ろしい事の様な気がす
    る。









































                    1−5b




b)現地訓練について
     詳細は以前提出した"語学研修報告書"にゆずるが、こちらに赴任し
    た際に、全く文字がわからず、簡単な挨拶程度も旨く行えなかったに
    もかかわらず、今日こうして不自由無く生活出来るようになったのも
    現地語学訓練のおかげであろう。
     タクシーに乗って移動する際に、運転手に簡単な指示を与える事が
    出来るくらいには上達した。ただし文字を読む点においては、かなり
    の不自由を感じている。バスや、乗り合いタクシーの行き先の文字が
    まったく読めず、これらの交通機関は、現地人の案内無しには乗れな
    い。より多くの時間、アラビア文字に触れておくべきだったと感じて
    いる。やはり現地だけではなく、日本でもアラビア語を訓練して欲し
    いものだ。

     日本国内での訓練は、語学と技術の訓練をより重点的に行うべきで、
    体育等においては専門職以外の人には、全く必要を感じない。国内訓
    練のカリキュラムは、協力隊についてその内容を良く理解した者が組
    むべきで、派遣国別に固有の問題を多く扱う事が大切ではないだろう
    か? 自分の受けた訓練内容は今になっても多く疑問を感じる。

































                    1−6




Supplement:

1.前任者赴任当時の製作基板パターン図(実寸)
    これは、分割して2つのboardになる。




2.現在開発中の基板パターン図(縮小率71%)
    両面基板の部品面




    両面基板の半田面、この他にシルク面、グリーンレジスト面がある。


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