REP0318

業 務 報 告 書


平成11年7月9日提出


インドネシア国派遣 短期派遣専門家(派遣期間平成11年5月2日〜7月10日)

  エンドウ ヒロシ  配属先
氏名 遠藤浩史  KPU(インドネシア総選挙委員会)



1.総論

 インドネシアは一昨年の経済危機に始まり、昨年のスハルト前大統領の退陣による
社会及び政治な危機を乗り越え、経済の復興、公正な社会を目指して、民主的な統治
を求めている。そのための総合的な国家改革のプランとして、平和で自由かつ公正な
総選挙を執り行うことを決めた。
 1999年1月27日に議会にて政党、議会構造、選挙に係る3つの法の改正を可
決し、これによって従来よりも透明で健全な実施体制のもとで、同年6月7日に総選
挙が執り行われる運びとなった。
 しかし、準備のための期間が短いことや、予算の不足、人的資源の不足など様々な
問題が山積している。

 これに伴い日本は、インドネシア政府がUNDP(国連開発計画)に国際支援のコー
ディネーションを依頼したのを受けて、3000万ドル以上の支援を決定。また技術
支援の一環としてJICA(国際協力事業団)からKPU(総選挙委員会)に専門家を派
遣することとなり、その一部にコンピュータ支援3名を充てることとなった。

 こう言った経緯から小職が、KPU(総選挙委員会)に派遣になり、KPUがコー
ディネートした報道センタ(The Joint Operation Media Center)JOMC=通称メ
ディアセンタで活動することになった。

 この報告書では、メディアセンタでの主な活動を報告し、その後に幾つかの検討を
行った。
 具体的には、次の第2部でメディアセンタの概要を説明し、第3部でメディアセン
タ内で小職が構築したコンピュータのシステムを説明する。また第4部ではホーム
ページについての活動を報告し、第5部でKPUシステムとメディアセンタ内のシス
テムを比較した。
 第6部は、今回の反省点から今後のシステムを描いてみた。

 活動の主な内容や背景は第2部でざっと判る様になっている。第3部及び第4部は
技術的解説が多いので興味のない方はざっと読み飛ばして頂きたい。また第5部、第
6部は考察であるが、多少偏った見方があるのも否めないので、その点を考慮して見
て欲しい。


2.メディアセンタ

 今回の派遣において小職が活動を行ったのは、IFES(International
Foundation for Election Systems)が中心となって運営してきた Hotel_AryaDuta の
メディアセンタが主であった、ここでは今回のインドネシア総選挙におけるメディア
センタの役割や運営方法、活動の報告を行うと共に、メディアセンタでの日本の援助
の方法と今後の支援の方向性について考えてみる。


●メディアセンタの位置付け

 今回の選挙において、集計の方法は3っつある。一つはKPU(総選挙委員会)が手
動で行う集計で、これが公式の集計結果となりうる。2つめは同じくKPU(総選挙
委員会)が既存の銀行内のネットワークを利用して集計する速報システムである。
 そして最後がメディアセンタなる場所にて集計される非公式の集計システムであ
る。

 このメディアセンタとは、正式には The Joint Oprations Media Center (JOMC)
と呼ばれるKPU(総選挙委員会)の認める公式な報道センタで、名前にある "Joint"
と言われる理由は、KPU(総選挙委員会)の依頼により、運営資金をUNDP(国連
開発計画)が出資し、アメリカのNGO団体であるIFES(International
Foundation for Election Systems)とオーストラリア選挙管理委員会(Australian
Electoral Commision)が中心となって運営を行い、これにインドネシア国内外の報道
機関や選挙監視のための団体等が多数参加しているからである。
 「ここを中心に、インドネシア内外へ情報を発信する拠点」として、今回のインド
ネシア総選挙では重要な意味を持つ場所である。首都ジャカルタにあるアルヤドゥタ
ホテル(Hotel_AryaDuta)内に開設され、5月18日にルディニ総選挙委員長の挨拶で
幕を開けた。これより報道関係者等に広く公開され利用されるに至った。

 運営の責任者は、IFES側が Mr. Hank Valentino = Senior Media Advisor
 が、オーストラリア選挙管理委員会側は Mr. Ros Mackay = Director of
Opreations があたり、実際の事務処理や実務の遂行をIFES出身の Ms. Kate
Birsel が行っていた。
 オーストラリア選挙管理委員会は常時5名以上の人員を配備し、IFES側も5名
の正職員を充てている。またIFESに雇用された現地人スタッフが30名以上、
ガードマンを20名以上、更には、データ入力用の人員をインドネシア国内の3っつ
の工科大学から400名以上の学生等を雇いそれぞれの業務に充てている。

 メディアセンタでの一番の大きな役割は、選挙結果を広く一般に知らしめることに
ある。特にメディアセンタ独自の集計システムを有しており、政府とは無関係の中立
な立場で選挙結果を集計して、逐次状況を報告するという大変意味のある役割を担っ
ている。
 この集計結果は非公式と言う立場ながら、選挙の公正さを保つためには大変重要な
位置付けにある。


●メディアセンタの業務内容

 メディアセンタの業務は大きく2つに分けられ、一つは情報の発信基地としての役
割を担うプレスセンタ。もう一つは非公式ではあるが投票結果を集計する集計センタ
である。
 運営は主にIFES側が行っており、多くのインドネシア人スタッフはIFESに
よって雇用されている形をとっている。(実際には雇用の資金はUNDPが担ってい
る。)


 プレスセンタはホテル1階の大宴会場に設置され、会場正面に設置された大型スク
リーンで集計センタの集計結果を表示する一方、インドネシア国内の各テレビ局がそ
れぞれにブースを持ち集計結果を放送できる様になっている。
 またスクリーン手前には記者会見や、公開討論会に使われる舞台と、それらを傍聴
できる椅子が置かれてある。
 また、大宴会場手前の部屋にはパーソナルコンピュータが11台、ファクシミリマ
シンが3台、コピー機が1台、電話器12台が設置され、報道関係者は自由に利用
し、情報の収集が行えるようになっている。

 集計センタは、ホテル2階の小宴会場を5部屋借切って設置されている。
 インドネシア国内にある各郡選挙管理委員会からの集計情報を、電話もしくはファ
クシミリで収集して、センタ内に設置されたデータベースに入力してコンピュータで
集計され、その結果をセンタ内のネットワーク経由でプレスセンタに、インターネッ
トを経由してインドネシア内外に知らしめる役割を担っている。
 このシステムの詳細は次の項にて詳しく説明する。


●プレスセンタのシステム

 プレスセンタは、主にインドネシア国内のテレビ局向けに作られた舞台及びテレビ
局のためのブースがある大広間と、報道関係者が11台のパーソナルコンピュータを
用いて集計センタの集計結果をいち早く知り、電話及びファクシミリを通じて情報を
発信出来る部屋に分かれている。

 大広間の舞台の正面には、大型スクリーンが設置され、地図情報を用いて集計結果
を知らせるGIS(the Geographic Information System)と呼ばれる集計結果が表示
されている。
 舞台そのものは、テレビの公開番組や、ルディニ委員長と対談番組などに利用され
た。
 また、各テレビ局のブースも放送用の設備を設置して報道に備える一方、イントラ
ネット(センタ内のローカルエリアネットワーク)のケーブルが配備されて、集計セン
タでの集計結果がテレビ放送にダイレクトに流せる様なシステムになっていた。

 大広間手前の部屋には、パーソナルコンピュータ11台が設置されており、これら
には集計センタのデータベースから直接情報が引き出せる様になっており、集計結果
がいち早くわかる仕組みになっている。またこれらのコンピュータはインターネット
にも接続されており、KPU(総選挙委員会)のホームページをはじめ、様々な情報を
引き出すことが出来る。
 更に、これらで得た情報は、センタ内に設置してある電話,ファクシミリにて自由
に発信することが出来る。
 また、パーソナルコンピュータにはスキャナやプリンタが接続してあり、ワープロ
ソフト,表計算ソフト等のアプリケーションソフトがインストールされているので、
これらを用いて、入手した情報を自在に加工し、報道に利用できる様な配慮がなされ
ている。

Pict.2-1


●集計センタのシステム

 今回、小職の派遣中の業務はほとんどこの集計センタ内のデータベース用ネット
ワークシステムにて活動してきた。コンピュータネットワークの詳細は第3部にて説
明してあるので、ここでは更に大きな視点で捕らえて、投票結果が集められ集計セン
タに送られて来るところから、最終的な集計結果データの配信までの流れを説明す
る。

 今回の選挙はインドネシア国内の全ての有権者が参加するもので、最終的な投票者
総数は一億一千七百万以上と言われている。この報告書を書いている1999年7月
の初旬現在、KPU(総選挙委員会)においてでも投票所の正確な数は掴めていない
が、およそ三十二万箇所以上にもなる。
 各投票所ごとに投票終了後、直ちに開票され集計された投票結果は、PPS(村役
票委員会)に提出されて、ここで村全体の集計を行う。集計完了後、更にPPK(郡選
挙管理委員会)に提出されて郡内全ての投票結果がまとめられる。このときインドネ
シア国内全てのPPK(郡選挙管理委員会)の数は4029になる。

 PPK(郡選挙管理委員会)で集められた各郡の集計結果は、事前に配布してある "
DA5" と言うフォームに結果を記入して、ファクシミリにて集計センタに送られ
る。
 PPK(郡選挙管理委員会)によってはファクシミリが設置していないところもある
ので、その場合には電話で内容を集計センタに知らせる仕組みになっている。今回ほ
とんどのPPK(郡選挙管理委員会)は電話で音声による報告となった。

 その後PPK(郡選挙管理委員会)は、まとめた集計結果をPPDU(県/市選挙管理
委員会)に提出し、PPDU(県/市選挙管理委員会)はそれぞれの県ごとの集計を行
う。この際PPDU(県/市選挙管理委員会)はそれぞれのPPK(郡選挙管理委員会)
から上がった各郡での結果を "DB5" と言うフォームに記入し、これを集計センタ
にファクシミリにて送る。

 集計センタでは、PPK(郡選挙管理委員会)から送られた "DA4" とPPD
U(県/市選挙管理委員会)から送られた "DB5" を見比べ、同じであればデータ
ベースに結果を入力する。 違いがある場合はそれぞれに送り返し、訂正を促す。

 ここで入れられた投票結果は、直ちにコンピュータで集計され、プレスセンタの大
型スクリーン、パーソナルコンピュータ、それに携帯電話のメッセージ機能を利用し
た、速報システムへと送られ、確認することが出来る。
 また、1時間に一度、これをテレコム(インドネシアの電信電話会社)にあるイン
ターネットのサーバに送り、インターネットを通じてインドネシア内外に情報を発信
する。

 Fig.2-1 はこれらの流れを描いたフローチャートである。


●集計の実際

 では実際に集計センタではどの様に集計が行われたのかを検証してみる。

 まず電話もしくはファクシミリによって、インドネシア各地にあるPPK(郡選挙
管理委員会)からの集計が上がってくるのを待つワケなのだが、実際にただじっと
待っていたのではいつ集計が上がってくるのか判らないので、集計センタ側から積極
的にPPK(郡選挙管理委員会)にアプローチをかけてデータの早期収集に努めた。
 この点が、KPU(総選挙委員会)の集計システムよりも早く集計が集まった理由で
あり、選挙支援の経験を豊富に持つNGO=IFESならではの処理と言えよう。

 IFESの電話オペレータの担当者は、事前にKPU(総選挙委員会)からインドネ
シア各地のPPK(郡選挙管理委員会)およびPPDU(県/市選挙管理委員会)に連絡
先を受け取っていたが、これらが最新の資料ではなく、実際には別の番号を使ってい
るところが多数あることを看破していた。彼等は投票日前までに、電話番号案内など
を利用して先方の電話番号を調べ上げて、相手先とのパイプを作り上げる様に努め
た。その結果、「全ての連絡先が判った訳ではない。」との説明であったが、大部分
はこれによって連絡先を明確にする事が出来た様である。
 これが結局のところ効を奏して、公式集計結果よりも倍近くの速さで投票結果を集
計出来るに至った理由なのであろう。この辺りは、IFESが今までに多くの選挙を
支援してきた経験にみられる「妙」なのであろう。

Pict.2-2
Pict.2-3

 これによって集計結果が集められる。基本的には、電話による口頭での情報の伝達
であるので、聞き間違えや書き間違えが起こりうるが、1枚のシートでの集計結果が
合計の数で間違っていれば気が付くことが出来る。また、PPK(郡選挙管理委員会)
から上がってきたデータを、後にPPDU(県/市選挙管理委員会)からのデータと比
べて、異なる内容だった場合はそれぞれにその旨を伝え正しいものに修正させる。
 実際に違ったデータが来る例は何件もあり、この様な修正を多く行っていたために
集計に時間がかかる理由である。ただし、JOMC=メディアセンタの集計の方針は
「PPKから上がってきた情報を集計する。」と言う物であるので、二つの集計結果
が異なる場合にはPPK(郡選挙管理委員会)からのものを採用してある。

 参考までに、DA5とDB5のシートを添付する。
ATTACH2-1 LEMPUING郡から送られてきた集計結果
ATTACH2-2 OGAN KOMERING ILIR 県の選挙管理委員会から送られてきたフォーム


 これらのシートによって集められた投票結果のデータは、63台のコンピュータが
用意されて、ここから入力される。Fig.2-3にあるような画面が用意されており、こ
れらを通じてデータの入力を行う。入力されたデータは、4台用意されたスーパバイ
ザ用のコンピュータの画面でスーパバイザが内容を確認して後に、サーバと呼ばれる
メインのコンピュータにデータが移され集計される。この時にデータをプリントアウ
トし、書き写されたフォーム(またはファクシミリで送られてきたフォーム)と共に
ファイルされる。

 ファイルされたフォームは、最終的にはIFESと出資先のUNDP(国連開発計
画)が保管するコトになる。

Pict.2-4
Pict.2-5

 サーバに入れられたデータは、各郡ごとのデータ、県ごとに集計されたデータ、州
ごとに集計されたデータ、そして全国規模に集計されたデータへと、それぞれ計算し
データベースに蓄積されて行く。国会の議席数等も算出される。
 これに蓄えられたデータの全ては添付のCDに納められているので、細かい内容に
付いてはそちらを参考にしていただきたい。


 これらのデータベースソフトは全てオーストラリア選挙管理委員会のメンバによっ
て作られている。データベースは SQL_Server Ver.7.0 を用いており、入力のプ
ログラムは Visual_Basic を用いて作られている。これらの組み合わせは極めて一般
的で、全く別のメンバが開発に携わったとしても、同じソフトウェアの組み合わせで
開発が進められるであろう。
 一般的なアプリケーションソフトを用いてプログラムを開発する利点としては、
「(専門的な立場の者なら)誰が見ても判る。」と言う点である。選挙の様な公正さを
追及されるデータ処理の場合には、これはとても大切なことであろう。
 更に、Mr.Rod Medew 率いるデータベースチームは、今回のメディアセンタの人員
配置では抜群に優れている。Amy Lu, Markie, Eko の3人は全員優秀でソフトの開発
から、データ入力時の保守、データのバックアップ時及びメインテナンス時の処理に
は常に細心の注意が払われており、まさに「水も漏らさぬ手配り…」である。
 24時間オペレート中は3人でシフトを組み、必ず誰かがデータベースの保守を行
える様に準備していた。


 電話でのオペレートやファクシミリの受信後の処理、コンピュータにデータの入力
を行ったのは、ジャカルタ周辺の3つの工科大学 STMIK BUNDA MULIA, STMIK
GUNADARMA, STMIK MUHAMMADIYAH の学生達である。総勢407人が、電話, ファクシ
ミリ, データ入力の3班に分かれ、さらにそれぞれの班が、3シフトに分かれ24時
間態勢で情報の収集にあたった。
 学生達はみな優秀で、業務を遂行するには充分な能力を有していた。
 また、それぞれの学校から、教員もこのメンバの中に入っており、マネージャもし
くはスーパバイザとして、学生達の統括や、業務の取り纏めを行っていた。


●メディアセンタからの情報の発信

 メディアセンタから発信される情報は、集計センタの非公式集計結果である。これ
を、 ・GIS(the Geographic Information System)による方法
 ・イントラネット(センタ内のローカルエリアネットワーク)による方法
 ・ノキア携帯端末による方法
 ・インターネットによる方法
 の4つ方法によって発信している。最後のインターネットによる方法の詳細は第4
部で詳しく述べているのでここでは説明を省略し、1番目の「GIS」、2番目の
「イントラネット」、そして3番目の「ノキア携帯端末」について説明する。

○GISによる集計結果の表示

 GISは、正確にはGISER(the Geographic Information System for
Election Reporting)と呼ばれるシステムで、地図情報に選挙集計の結果を重ね合わ
せて、地図の上からある地域の開票の進行状況や、政党の得票数を知らしめるもので
ある。グラフィカルな視覚効果狙ってIFES(またはMr.Hank Valentino氏?)が
企画し、BPPテクノロジという会社に委託して進められた。
 特にプレスセンタの正面にある大型スクリーンは、メディアセンタの中心的な存在
でもあるので、この様な見た目にもきらびやかで人目を引く表示は非常に宣伝効果が
高くインパクトがある。それゆえに採用されたものと思われる。

 ところが選挙直前になり、ホテルの設備であったビデオスキャンコンバータ(パー
ソナルコンピュータの画面出力に使うRGB信号を、通常のテレビ用出力であるコン
ポジット信号に変換する装置、このホテルにあったものはかなり高価なものでパソコ
ン用高解像度出力を変換することが出来るものであった。)が不具合を起こして、利
用不能になり、急遽IFESが安価なコンバータを購入せざるを得なくなってしまっ
たため、大型スクリーンに表示できる内容が大幅に減少させざるを得なくなってし
まった。
 また、スクリーンに投影しているプロジェクタも、会場が明るい状態では見難いも
のであるために、「スクリーン上に映っているのが何であるのかが判らない」と言っ
たお粗末な結果になってしまった。

Pict.2-6


 また、これらGISの内容はインターネット上にも置かれてあり、インターネット
からも見ることが出来るが、他のインターネット情報と同じく、「状況を一望出来な
い」と言った欠点があり、今一つ利用の価値を見出せない。
 今後この類の情報が、選挙結果をどの様に上手く伝え得るのか…?と言った課題を
残した。


○イントラネットによる集計結果の表示

 本来イントラネットとは、「インターネットの技術を用いてローカルエリアネット
ワークを利用する技術」を指す。今回もそれに外れなく、インターネットで配信され
る内容をデータ更新の遅滞無くメディアセンタで見られるものを目指していたのだ
が、IFESでインターネットの担当をしていた Ms. Adel Valentino が、データ
ベースとインターネットとのリンクに手間取り、開票当日までに選挙結果のページの
作製が間に合わないと言った事態になったのを、オーストラリア選挙管理委員会側が
見るに見兼ねて、データベースチームに命じてFig.2-4 及びFig.2-5 を急遽作製し
た。
 センタ内の情報の公開は、このフォームが標準となって、センタ入り口にこの
フォームをプリンタで印刷したものを張り出すこととなる。

ATTACH2-3 Province Summary の印字結果
ATTACH2-4 Party Summary の印字結果

 その後にインターネット上に集計結果の内容が公開され、これも「データ更新の遅
滞無くメディアセンタで見られる」様になったが、大勢を一望出来るこのフォームの
方が圧倒的に優れており利用価値が高い。インターネット上の掲載内容もこのフォー
ムに直すべきであると考え、その点を進言したが採用されなかった。
 これと同じフォームでインターネット上の掲載を変更するためには、データベース
側のデザインの多少の変更が必要になってくる。これをデータベースチームが了解し
なかったために実現が出来なかったものである。現行で問題無く稼動しているシステ
ムに手を加えること嫌ったために、データベースチームが変更を了解しなかったので
ある。これはある意味で充分に納得が出来る理由であるが、この辺りからもIFES
側とオーストラリア選挙管理委員会側の、事前の擦り合せの不味さと、対立の構造が
見え隠れする辺りである。


○ノキア携帯端末での集計結果表示

 これは、携帯通信端末大手のNOKIA社がフィンランド大使館と組んで、支援の
一部として、選挙結果を携帯端末を通じて確認できるシステムである。
 利用の方法は、新聞に掲載された広告のコピーを添付するのでそちらを参照された
い。
 電話交換機からの情報をモデムを通じて受け取り、持っている内容(集計結果)を
再びモデムを通じて送り返すだけのパーソナルコンピュータを用いたシステムであ
る。
 集計センタのデータベース側から、ASCIIコードと呼ばれる基本的な形式での情報
を提供されるだけで、独自にデータ処理をして返信内容を作製するシステムである。

 Windows95を利用したパソコンが5台で全てを賄っており、コストの割りに効果の
高い援助方法であると関心した。また新聞広告等で宣伝しており多くの人の目に触
れ、認知度も高い。

ATTACH2-5 ノキア携帯端末の操作方法
Pict.2-7


●メディアセンタでの日本の援助

 この選挙において日本はコストシェアリング方式と言う形で資金の援助を行った。
具体的には援助資金をUNDP(国連開発計画)に全て預け、UNDPは他の国の資金
と併せ、それを援助に活用して行くと言う方法で、資金の活用等は全てUNDPの決
められた方法で行われて行く。
 日本の総額はUS$34,450,000-と全体の半数を超える額の援助を行っているので、当
然メディアセンタにも多くの援助がなされている。
 今回は、メディアセンタ内で使用されたパーソナルコンピュータ100台、ファク
シミリ55台、テレビ20台…と言ったほとんどの機材が日本からの援助であるし、
目には見えないものの、ローカルスタッフの手当てや、ホテルの部屋代も日本からの
援助の中から充てられていると言っても良いだろう。
 メディアセンタは、いかにKPU(総選挙委員会)からの依頼で設立されていると
言ってもその母体はIFESやオーストラリア選挙管理委員会なので、日本政府がこ
こに直接援助を導入することは難しいのでは…と考えられる。それを考慮すれば、こ
の形(コストシェアリング方式)の援助は非常に有効であり、メディアセンタでの資
金注入がインドネシア総選挙において十分な効果を上げたと言って良いと思う。

 しかし、実際にメディアセンタに来た人、もしくはメディアセンタで働いていた人
の目には、IFESのまたはオーストラリア選管の活動が真っ先に映るであろうし、
彼等の印象が強く残ってしまうに違いない。
 実際に汗を流して働いていたのは、ほとんど彼等である。また、メディアセンタで
のクロージングセレモニーの際も、KPU(総選挙委員会)のルディニ委員長の他に壇
上に並んでいたのは、UNDP(国連開発計画)、IFES、それにオーストラリア選
挙管理委員会の面々であった。

 今回は、援助を行うことが決まった時期も、専門家が派遣された時期も、比較的遅
く、選挙開始までの間が余り無かった、と言う理由もあるが、もう少し日本の援助と
してもっとメディアセンタの運営に深く関わっておいても良かったのでは…と思う。
 小職が赴任した時期でも、ネットワーク関係の人員は不足しており、この部分にも
う2〜3人の人材が日本から充てられていれば、日本の援助に対する見方は多少でも
違っていたのでは…と思う。

 勿論、欲を言えば、JICAもしくは日本政府の名前がメディアセンタの運営に加
えられ、Mr. Hank Valentino や Mr. Ros Mackay に並び得る人物がいればこれに越
したことは無いのだが…
 小職も出来得る限りの活動を行い、努力はしたつもりであるが、なにぶん "一人"
なので、出来ることにも限りがあった。
 この辺りの「人的援助の方法」は、今後の検討の余地がある様に思う。


●メディアセンタの効果

 メディアセンタは、KPU(総選挙委員会)が公式に認めたプレスセンタである。
が、投票が終わり、集計がはじまった辺りから、やや風向きが変わってきた。
 実際には、ルディニ委員長の「非公式の集計結果を利用している報道機関があり、
遺憾である。」と言った内容の発言。「メディアセンタはKPUのマークを使うのは
けしからん。」と言った内容など、様々な障害が持ちあがってきた。

 これらの障害が持ちあがってきた理由には、KPU(総選挙委員会)内部に、メディ
アセンタが公式のプレスセンタであると言った事実を知らない者や、国外から余計な
援助を歓迎しない向きがあることが原因なのではないかと考えられる。
 また、投票結果の集計と言う同じ様な仕事を行っているにも関わらず、遅々として
成果の上がらないと言う妬みもある様に感じる。事実、集計結果が2つあるというこ
とは非常に紛らわしく、混乱を招く原因になっていると言うのは事実ではあろう。し
かし、全て了解済みであり事前に判っていたことでもある。
 小職の個人的な考えとしても、集計のシステムが2つ存在することは芳しくないと
考えるが、国際社会の目から見れば、「インドネシア国内で独自に執り行った集計結
果が果たして信頼でき得るのか…?」と言う見方をされる点にもインドネシア側は留
意すべきと思う。

 こう言った状況と、遅々として進まない集計に業を煮やしたIFESは6月21日
を持ってメディアセンタを閉鎖した。また非公式の投票結果も24日正午をもって終
わり、集計結果は78.85%の開票率であった。
 当初これほどまでに時間がかかるとは考えられておらず、ホテル代や人件費もバカ
にならないため、閉鎖に踏み切ったのであろう。
 現場にいた一人としてみれば、あと1週間あれば、85%は超え90%に近づく、もう
あと2週間も続ければ、限りなく100%に近づく…とも思えるのだが、インドネシア
国内の状況を考え、2つの集計結果が違ってしまった時の混乱を配慮すれば、その違
いの差が埋められる辺りで集計を止めるのが妥当であろう。


 今回メディアセンタが公式のプレスセンタとして存在したため、報道機関や関係者
は情報の収集もしくは発信のための作業が一ヶ所で行え、大いに利用された。また、
テレビの公開番組やルディニKPU委員長との対談などでも利用され、それなりの効
果は上げられていたと考えられる。
 特にKPU内部では報道関係者を長い間(24時間)抱えて対応できる場所が無
く、その意味でもメディアセンタの存在価値はあったと言えよう。また、IFES、
オーストラリア選管が撤退してしまい、選挙に対する明確なスポークスマンがいない
今日(1999年7月初旬)に至っては、KPU自身では事態の説明が明確に行えな
いために、KPUのヘッドクオータ周辺にてデモが多発している。
 この辺りも、「メディアセンタの存在の効果」を如実に物語っている様にも思う。

Pict.2-8
Pict.2-9


3.集計センタシステム詳細

 集計センタで、配備されたコンピュータを用いてネットワークを構成した。
 MS-WindowsNT Server Ver.4 を核にしたシステムで、極めて一般的な、誰が構成し
ても同じになる様なシステムである。
 MS-WindowsNT を用いたネットワークは今日ではこの程度の規模のものでは、標準
になっている。他に適当なものが無く、また MS-WindowsNT 自身が多くの点で優れて
いるからに他ならない。ここでは、これに用いられた機器や接続の方法を紹介して行
く。


●各CPUのシステム構成

メインサーバ機 2台
 CPU .................. Dual Intel Pentium II 400MHz (CPUを2つ搭載)
 Memory ............... 512MB (DIMM_256MB x2set)
 ChipSet............... Intel 430BX
 MotherBoard........... ASUSTech P2B-D
 FDD .................. 3.5"FDD
 SCSI Controller....... Adaptec AAA-133SA
 HDD .................. SCSI 9GB x 2
    (SCSI RAID Controler によってミラーリング)
 CD-ROM_DRIVE.......... CREATIVE 48倍速
 TAPE_STREAMER_DRIVE... HP DAT_Type TAPE DRIVE
 VideoCARD............. S3 Virge with 2MB memory, AGP_Bus
 NetworkCARD........... IntelEtherExpress100, 100BaseT, PCI_Bus
 MOUSE ................ Logitech PS2 Mouse 1
 KEYBOARD ............. PS2 Compatible 103Keyboard
 Monitor .............. 高解像度(1152x870) 15"

Pict.3-1


ワークステーション機(データ入力用) 79台
 CPU .................. Intel Pentium II 400MHz
 Memory ............... 64MB (DIMM_64MB x1set)
 ChipSet............... Intel 430BX
 MotherBoard........... ASUSTech P2B-S
 FDD .................. 3.5"FDD
 HDD .................. EIDE 6GB
 CD-ROM_DRIVE.......... CREATIVE 48倍速
 VideoCARD............. S3 Virge with 2MB memory, AGP_Bus
 NetworkCARD........... IntelEtherExpress10/100, 100BaseT, PCI_Bus
 MOUSE ................ Logitech Serial Mouse 1
 KEYBOARD ............. 103 Compatible Keyboard
 Monitor .............. 高解像度(1152x870) 15"

ワークステーション機(プレスセンタ用) 20台
 CPU .................. Intel Pentium II 400MHz
 Memory ............... 64MB (DIMM_64MB x1set)
 ChipSet............... Intel 430BX
 MotherBoard........... ASUSTech P2B-S
 FDD .................. 3.5"FDD
 SCSI Controller....... Adaptec AHA-2940UW
 HDD .................. SCSI 6GB
 CD-ROM_DRIVE.......... CREATIVE 48倍速
 VideoCARD............. S3 Virge with 2MB memory, AGP_Bus
 NetworkCARD........... IntelEtherExpress10/100, 100BaseT, PCI_Bus
 MOUSE ................ Logitech Serial Mouse 1
 KEYBOARD ............. 103 Compatible Keyboard
 Monitor .............. 高解像度(1152x870) 15"

インターネットサーバ機 1台
 CPU .................. Intel Pentium II 400MHz
 Memory ............... 128MB (DIMM_128MB x1set)
 ChipSet............... Intel 430BX
 MotherBoard........... ASUSTech P2B-S
 FDD .................. 3.5"FDD
 SCSI Controller....... Adaptec AHA-2940UW
 HDD .................. SCSI 6GB
 CD-ROM_DRIVE.......... CREATIVE 48倍速
 VideoCARD............. S3 Virge with 2MB memory, AGP_Bus
 NetworkCARD........... IntelEtherExpress100, 100BaseT, PCI_Bus
 MOUSE ................ Logitech PS2 Mouse 1
 KEYBOARD ............. PS2 Compatible 103Keyboard
 Monitor .............. 高解像度(1152x870) 15"


●周辺機器の概要
 Printer .............. Xerox 3120 Laser Printer 7台
 Network Hub .......... Intel Express 140T Standalone Hub 5台
 Network Switch ....... Intel Express 510T Switching Hub 3台
 Scanner .............. Flad Head Scanner 3台
 UPS .................. APC 1000W UPS 50台

●使用ソフトウェア
 NetworkOS ............ MS-WindowsNT Server Ver.4 + ServicePack4
 ClientsOS ............ MS-WindowsNT Workstation Ver.4 + ServicePack4
 Internet Connection .. MS-IIS
 DATABASE ............. SQL Server Ver.7
 Application .......... MS-Visual Studio Ver.6
 Others ............... MS-Office97


●その他の設備

○インターネット接続
 テレコム(インドネシア国内の電信電話会社)が専用線をホテル内まで引き込み、
ターミナルアダプタ、ルータ、ファイヤーウォール(Compaq社製PC_Proliant1600を
用いてOpenBSDを使ったもの)、等必要なものを一切が準備された。

○NOKIA携帯端末用接続
 ノキア社が全てのシステムを準備した。ネットワークのケーブル終端を渡したの
み。

○放送局用端末接続
 これらは全て放送局側でコンピュータを用意した。スイッチングハブを介したネッ
トワークケーブルを供給したのみでその後一切のケアを行わない。


●設置の実際

 Fig.3-1 に実際の接続の簡略図を示す。

 これに示された他に、一般事務用の物として7台のコンピュータとプリンタ1台
が、全く別のワークグループとして存在する。また、予備のコンピュータとして5台
保持している。これらを併せて総計102台のコンピュータが配備された。
 なおUPS(無停電電源供給装置)は1000Wの容量があり、一つについて十分
2台のコンピュータに電力を供給出来るので、2台に一つの割りで設置されている。
勿論ハブやスイッチにもUPSから電源は供給されている。ただしプリンタは、UP
Sからの電源供給を受けていない。

 ユーザのプロファイル登録やログインの方法について、通常であれば小職はポリ
シーエディタで個々に設定したユーザの設定をローミングプロファイルを用いて使用
する方法をとる。
 しかし、今回は同じシステムアドミニストレータの Mr. Faisal Yahya の進言によ
りレジストリエディタを使って直接レジストリの設定を変える方法を採った。この方
法の方が、きめの細かい設定が出来る反面、設定するのにレジストリの設定内容を詳
細に知っている必要がある。単に Mr. Faisal Yahya がこの方法に馴れているからな
のだが、特に反対する理由もないので、こちらを採択した。

 ネットワークは、運転中も特にに支障無く稼動した。
 システムの構成は、私が考えている事とは多少違う部分(TCP/IPとNetBEUIが混在
している点など)もあったが、特に一般的なシステム構成なので、大きな支障などは
全く起きず、極めて順調にシステムは稼動された。



●ネットワーク管理者の問題

 派遣された直後、KPU(総選挙委員会)に配属されて、KPUのコンピュータシス
テムとメディアセンタのコンピュータシステムの二つを知らされたときに、KPUシ
ステムは、完全に業者依託の形式を採っているの対して、メディアセンタのシステム
はネットワークのエンジニアが全くいないままに事態が進行していることに気が付い
た。
 小職はネットワークのシステムアドミニストレータの経験はあるが、元来ネット
ワークが専門であるわけではない。しかしこの事態に対処するためには、自らこの任
に就く以外無いと判断してメディアセンタのシステムに手を染めることにした。

 その後、IFESに Mr. Roger Plath なる人物が今回のコンピュータシステムを
統括するとの説明があったが、彼自身はコンピュータのセットアップは納入業者が行
い、全て業者が面倒をみるとの説明であり、余り積極的に機械に触りたがらない。実
のところはほとんど実務の経験がないがゆえである。
 今回のシステムで利用するOSが MS-WindowsNT であることを考え、納入される機
械がショップブランド(小売の販売店が部品を組み合わせて自社のブランドで売られ
るコンピュータ。途上国ではこの手のコンピュータは極めて一般的)であることを考
えれば、業者が全て行うことは難しいと考えた。IFESは世界各国で選挙支援を
行ってきているものの、コンピュータを使っての集計の経験は無い。この分野では小
職に一日の長がある。
 納入業者は思っていたよりも能力があり驚かされたものの、結局は十分満足な仕事
は出来ず、セットアップは小職の手によって行われることになった。(その結果、全
てのコンピュータに小職の名前とJICAの名前が登録されることになった。)

 ところが、この時点で Mr. Roger Plath は米国に帰国してしまい、再びジャカル
タに戻ってくるのは選挙の4日前とのコトである。流石にIFES側もこの事態の不
味さに気づいた様でインドネシア人の Mr. Fisal Yahya を採用する運びとなった。

 ネットワークの管理にはネットワーク管理者が欠かせないのだが、このネットワー
ク管理者のバックアップは一般的に忘れられ勝ちである。今回もうっかりすると一人
で何もかも面倒を見なければならないか…と考えていたが、もう一人のネットワーク
管理者が現れ、システムの構築を二人で行うことになった。

 彼は、まだ23歳と言う若さでありながら、大変優秀であり、また職務にたいして
積極的でもある。ホテルにネットワークケーブルの配線を依頼したがなかなか実施さ
れないことに痺れを切らせ、自ら天井に上がりケーブルの配線を行うほどである。

 彼に限らず、今回IFESが採用している人材の能力は極めて高い。こう言った人
物を容易に見つけ出し採用出来るIFESの「優秀な人材を見つけ出す能力」には目
を見張るものがある。自らに不足している部分をすぐに見つけ出し、それを直ちに補
う手段を持っていることは、海外で短期間に活動する上には大変有効であろう。見習
うべきである。

 いずれにしてもネットワーク管理者の人材は確保でき、システムを問題無く稼動す
ることが出来たが、2人では今一つ手薄である。(特に今回は24時間のサポートが
要求されたため)
 今にして思えば、この辺りに日本人の入り込む余地があり、メディアセンタ内でJ
ICAもしくは日本政府の援助の認知度を上げる事の出来る余地があった様に思う。



4.ホームページ

 今回の派遣目的のひとつに、KPU(総選挙委員会)のウェブサイトの日本語部分の
作製と言うものがあった。
 当初この業務内容が小職に課せられるものとは考えていなかったが、"HTML"と呼ば
れるホームページの作製に用いられている記述方式を利用して、日本での勤務先で製
品カタログの様なモノを作製した経験があったので、この業務がまわって来ても十分
に対処できると考えていた。
 結局は、KPU(総選挙委員会)のウェブサイトの作製の一部がメディアセンタのあ
る Aryaduta_Hotel 内で行われていた都合上、この業務の対応は小職が行うこととな
る。

 このウェブサイトの作製の作業は、基本的にはインドネシア語を基にして構成され
ているものに日本語の翻訳ページを付加する形で進めた。開発用のアプリケーション
ソフトが準備されなかったため、MS-WindowsNTもしくはMS-Windows98に標準で添付さ
れているソフトウェアだけで開発することになった。
 後に、処理するファイルの数が多くなり、これらのソフトでは賄いきれなくなり、
テキストエディタを個人的に日本から取り寄せた。
 詳しい開発の手段については後述する。

 最終的に出来あがったプログラムは今日(1999年7月)現在、http://www.kpu.go.id
のURLにて確認が出来る。本報告書に添付してあるCDにもウェブサイトの内容が収
録されているので併せて確認して欲しい。


ホームページの内容

 はじめに、ホームページとして現れるのが Fig.4-1 である。この画面の左側にそ
れぞれのページへ飛ぶための BANNER と呼ばれる部分がある。ここで「日本語」とあ
る部分をマウスでクリックすると日本語のページを閲覧することが出来る。

 ここで左の一番上にある「Hasil Pemilu 1999」と書かれた部分はKPU(総選挙委
員会)の公式集計結果へのリンクで、この部分はメディアセンタの外に置かれてお
り、またhttp://www.hasilpemilu99.kpu.go.id と言う別のドメインにあるのでCD
には収録されていない。
 この部分はKPU(総選挙委員会)内の、IBM製メインフレームコンピュータAS
400を用いたシステムから得た情報を公開しており、KPU(総選挙委員会)の建物
内から hasilpemilu99.kpu.go.id へ直接情報がアップロードされている。

 また、「GIS Display of Election Results」も別のドメインにあってCDには収
録されていない。これは第2部で触れた地図情報を用いた選挙の開票状況を公開して
いる部分である。


 Fig.4-2 は日本語による ルディニ総選挙委員長による挨拶である。
 このページから、「メディアセンタ集計結果」「各政党の紹介」「大統領立候補者
一覧」と言った日本語による各ページへとジャンプできる。
 ちなみに、この挨拶文は業者に依頼して責任を持って翻訳してもらったものであ
る。内容については、日本語に訳されてからKPU(総選挙委員会)側に了解をもら
い、また掲載する形、すなわちこの絵の状態になってからも改めて確認してもらい公
開した。
 「各政党の紹介」についても、政党の名称は日本の外務省が使用している名称を
ファイルの形式でもらい、カットアンドペーストで貼り付け、直接タイプすることに
よって生じる間違えを避けた。
 この様に、なるべく小職自身の手で直接キー入力すること避け、間違いが起らない
様に、またインドネシア語によるオリジナルの雰囲気を損なわれぬように努めた。


 Fig.4-3 はメディアセンタでの集計速報への入り口である。インドネシア語/英語
による集計結果は県での結果までしか見られない。これはファイルの数が4000を
超える
膨大な量になるため、実際にプログラムを作製することが大変なために担当者が途中
で諦めてしまったためである。日本語はこの部分もカバーしており、インドネシア内
の各郡での投票結果が見ることが出来る。
 この結果、作られたページの数は日本語の部分だけで5000ページ近くになっ
た。


 Fig.4-4 はプログラムのソースファイルの比較である。
 日本語ではオリジナルと違い、全てテキストエディタと呼ばれるプログラム編集用
のソフト(ワープロの様に文字を扱うソフト、ワープロよりももっとプリミティブ
で、図や表は扱えない。)を用いて作製されたので、ソースの見易さは抜群である。
 「ルディニ委員長の挨拶」の部分のそれぞれを比較すると、かなり大きな修正があ
る。出来あがった画面も細かいところで違いが見られる。



●ホームページ作製の過程

 では、ここで具体的にどの様に作製したかを簡単に説明する。

 通常ホームページの開発は、専用のアプリケーションソフトを用いて行うが、細か
い作業が必要になると高価な専用ソフトを用いなければ実現できない。そこで大まか
な編集を専用ソフトを使い、エディタと呼ばれるソフトウェアで細かい手直しを行う
のが一般的である。
 今回、専用ソフトは MS-Windows に標準で添付されてある "FrontPage_Express"
を用いることを思いついたが、所詮はおまけで付いているソフトなので、痒いところ
に手が届かず使い勝手が今一つ良くないためにこれを利用せず、はじめからエディタ
( MS-Windows に添付してある "メモ帳" )を用いて作業を始めた。しかしこれも使
い勝手が悪く、扱えるファイルも小さな物しか用いられない、そのため日本から汎用
のテキストエディタを送って貰い、これを用いて開発した。

 画像の編集は MS-Windows98 に添付されている "ペイント" を用いた、これも使い
勝手の良いソフトとは言い難いが、今回は画像を処理する機会が比較的少ないので、
涙を飲んでこれで耐え忍んだ。ホームページの「日本語」のBANNERが他の物と違って
みえるのはそのためである。

 英語、インドネシア語のそれぞれのページは、高価な専用ソフトを用いて開発が行
われており、開発時間が大きく短縮できる環境にあった。(そのワリには小職と作業
時間が変わらないが…)
 これらのソフトは日本語に対応していないため、日本語のホームページの開発には
利用できない。例えば、パソコンに日本語のOSがあって日本語のフォント(文字情
報)を持っていても、日本語に対応していない英語のワープロソフトをインストール
しても日本語は表示出来ないのである。(近年この問題は解決されつつある。)
 従って、ある程度の道具は、日本でそろえておかないと不自由すると言うことがわ
かった。今回は事前に業務内容が不明瞭であったため病むを得ないが、現地でこう
言った道具を入手することが困難な場合、やはり携行機材として道具を事前に準備す
る必要があると感じた。

 さて、これらの様なソフトを用いて、画像及びプログラムを開発し、出来あがった
ものを "ftp" と呼ばれるプロトコルでウェブサイトの置いてあるサーバに移す。
これで一応はホームページとしてインターネットを通じて見ることが出来るのだが、
今回はこれにデータベースとのリンクがあるので、もう一つ工程が増える。

 Fig.4-5 は、直接開発したプログラムとインターネットサーバ上にあるソースとの
比較である。
 開発したままのプログラムはメディアセンタにあるデータベースと結ばれており、
メディアセンタ内のネットワークの元ではデータベースの内容がリアルタイムで表示
させることが出来る。
 しかし、インターネットのサーバはメディアセンタの外にあるので、データベース
の内容を直接表示することは出来ない。この表示部分を実際の数値に変換しなくては
ならないのである。そのため "JAVA" と呼ばれる言語を用いたプログラムにて、
この部分をデータベースのリンクから実際の数値に変換することを行った。
 比較してみると、インターネットサーバ上にあるものは(右側は)実際の集計結果
の数値が入っているのが判る。。

 今回、この作業工程が自動化出来ず、「必ず誰かが手動で行わなければならな
い…」と言う状況になってしまった。そのため小職を含むウェブサイトの担当者3人
でシフトを組んで行うこととなった。つまりメディアセンタ内に常に誰かがいて手動
でデータの更新を行わないとインターネット上のデータが新しくならない。


●ホームページに対する所見

 今回のホームページ作製は、当初余り大きな業務ではないと当初考えていた。実際
に「内容を翻訳したものに入れ換える。」と言っただけならば、全く大した作業では
ないのだが、翻訳されるべき対象が出来ていなかったり、掲載される内容が適正でな
いと言った障害があり、それらの解決に翻弄される結果となってしまった。
 事前の十分な準備と、掲載内容の意思決定が明確にされる必要があると強く感じ
た。今回、KPU(総選挙委員会)がウェブマスタと呼ばれるべき責任者を置かなかっ
たなめに、IFES側にイニシアチブを取られズルズルと引きずられる形でウェブサ
イトが運営されるコトとなった。このサイトが「KPUの公式ホームページであ
る。」と胸を張って言うには、KPU側のホームページ作製に対する積極的な働きか
けが必要であろう。

 今回のホームページにおける「選挙結果の提示」には、データベースとの連携が実
に巧みに絡んでおり、機器の配置(物理的な距離や接続環境)やソフトの選択など、
多くの問題を事前に解決しておかなければならない事が多いと改めて強く感じた。
 また、データベースは多くの情報を蓄積し処理することが出来るが、「それをどの
様に提示するのが適当か?」と言うことが今回問題となった。「選挙の集計結果」と
言う点で見れば、大勢を掴める様な情報の提示を行うのが適当であろうし、詳細が判
る提示を行わなくてはいけないだろう。
 今後の課題として「提示の具体的な方法」が残る。

 データベースとのリンクは、小職にとっては全く新しい経験で、SQLサーバを勉
強するいい機会となった。今後データベースリンクは様々な分野で活用されて行くで
あろうから、一層理解を深める必要を感じた。また今後の選挙支援においてもデータ
ベースと他のアプリケーションとのリンクは重要なポイントとなるであろう。

●IFES側の対応

 第2部のメディアセンタの項でも述べたが、今回これらのウェブサイトを作製して
いたのはIFESであり、主に担当していたは Ms. Adel Valentino であった。しか
し彼女自身は選挙の直前までアメリカ=ワシントンDCにて開発を行い、実際にジャ
カルタに現れたのは選挙の2日前である。それから集計結果のページの開発をはじめ
るのであるが、具体的なビジョンを持たないでの開発なので、出来あがったものが今
一つ的が絞れていない様に感じた。
 その後データベースチームから良い表示方法についての提言があったが、これにつ
いても特に具体的な行動をとっていない。

 ホームページの表示内容については、IFESの代表である Mr. Hank Valentino
がKPU(総選挙委員会)との擦り合せを行ったのであるが、具体的な手段を持たない
ままの打ち合わせであった様である。小職はこの会議に参加できなかった。これは今
もっても残念である。これに参加していれば後のホームページ作製に纏わる不具合を
事前に解消出来ていた。
 特に、ファイルを5000も準備しなければならない様な「愚」は避けられた。全
く残念である。

 また、実務レベルでもIFESの担当者、"デザイン" や "レイアウト" には長じ
ていたものの、"ASP" や "CFM" と言ったデータベースとのリンクの様な技術的な点
では若干問題があった様に思われる。



5.KPUシステムとの比較

●はじめに

 ここでいう「KPUシステム」とはKPU(総選挙委員会)が銀行内の既存のネット
ワークシステムを利用して集計をおこなっている、「公式の集計速報システム」のこ
とである。これの詳細な解説はKPU側からの報告を待つこととし、ここではこのシ
ステムと、メディアセンタの集計システムを比較して、それぞれの意味や存在価値を
検討してみる。

 まず比較をはじめる前に、大きな前提として、「KPUのシステムは大変立派なも
ので、今回のシステムは様々な意味で適当なものであった。」と言う点を強調してお
きたい。
 例えば「なぜ銀行の既存のネットワークを利用したのか?」「なぜAS400をメ
インのコンピュータに選んだのか?」等にはそれぞれもっともな理由があり、現状の
中で最も適当なものを選んである。
 また、実際の業務を行っている PT PRAWEDA のメンバもみな優秀であり、業務の遂
行に大きな支障は無い様にみえる。

 従って、KPUシステムのコンピュータとメディアセンタコンピュータを単純に比
べるわけではない。情報の収集から配信までを含めて "システム" と呼んでいる。


●公式と非公式

 今回、投票が終わり集計がはじまってから良く言われるのは、メディアセンタでの
非公式集計速報とKPU(総選挙委員会)の公式集計速報があって、「非常に紛らわし
い…」ということである。
 しかし、KPU内部での集計された公式結果だけが発表される状況を想像してみる
と、民衆や国際世論がその結果を納得し得るか…は甚だ疑問である。

 小職も集計速報が二つあることには余り賛成の立場ではない。しかし途上国では、
政府からの発表だけが存在する状況もあまり歓迎できるものではない。
 もし速報が二つあって紛らわしいのであれば、KPUは速報を行わずに手動での集
計だけに専念すれば良かったのではないか?速報は非公式であってもメディアセンタ
に任せておけば良かったのではないか?

 日本での選挙の場合と比較しても、その比較はあまり意味のあることではないが、
小職の知り得る限り、日本での選挙速報はほとんどにおいて放送局(NHK)が独自
に集計したものを見ている。これはまさに「非公式」の集計速報に他ならない。「当
選確実」などと言う様な情報は、公式には発表される物なのだろうか?
 非公式であってもそれなりの役割を担っており、また社会からも認知されている。

 実際に今回のインドネシア総選挙の集計結果の傾向は、公式非公式ともに、集計が
はじまってからメディアセンタの集計が終わるまで、大きな違いは無かった。


●集計結果の内容

 KPU(総選挙委員会)は報道機関への情報提供の場を、メディアセンタ1個所に
絞ってあったが、メディアセンタとの関係の不味さが露呈し始めた辺りから、具体的
な集計結果を自ら提示しなければならなくなった。その結果、報道関係者に集計速報
を知らしめる手段としてKPUの建物内部にプロジェクタを使って速報を提示し始め
た。
 また、公式集計結果はインターネット上に公開されて、ここからも情報を取り出す
ことが出来る。
 これらの結果は速報集計システム、すなはちコンピュータから発信されているデー
タである。その内容は、国会議員選挙についてならば27州それぞれの48政党ごと
に集計された得票数の結果と、インドネシア全国での48政党の得票数の集計結果が
確認できるわけである。

 ここで、今回のインドネシア総選挙の国会議員選挙は地域における一票の重さが違
うので、議席数の多い地域で票を多く獲得した政党は、全国トータルでの得票数が少
なくても議席数が多く取れるのである。

 KPUの集計結果は、単に得票数のみを発表しているので、議席の数が明確にされ
ていない。上記の理由で得票数が多くても占有議席数の少ない政党があることを事前
明確にしておいた方が後の憂いが少なくなる。

 この議席の算出方法は極めて簡単で、以下の様な式にて算出できる。

      ある政党の得票数
 ある州内でのある党の獲得議席数=----------------------------
        ある州での有効投票総数
       -------------------------
      ある州の議席数

 簡単な数式であり、電子計算機で簡単に算出できる内容であり、メディアセンタで
はこれらを集計結果の一部として発表している。
 恐らくIFESもしくはオーストラリア選管は、こう言った内容が選挙結果として
重要であることを充分承知しているので、議席の獲得数を表示したのであろう。確か
にこのインドネシア総選挙は、投票の後、政党間で話し合いによって確定する要素が
多いのだが、この "議席数" については投票結果で決まる要素が多い。

 また、これは制令76号によって定められているので、本来ならば一般に知られてい
るべき事実なのだが、新聞等の報道機関にも正しく理解されておらず、平気で間違っ
た情報を掲載しているもある。この辺りはインドネシア国内のジャーナリズムのレベ
ルが伺われる。(実際にメディアセンタ内でも、記者会見等の現場で見聞き(英語で
話している場合)していても、当を得た内容ではない場合が多い。)
 テレビの公開番組でこの算出方法を改めて説明する一幕があったが、メディアセン
タでデータ入力をしている学生達から、「何を今更…」と言う失笑を買っていた。

 速報集計結果の内容は、「大勢が一望出来ること」が重要であるとすれば、様々な
集計結果の発表方法の中で、唯一メディアセンタのデータベースチームが作成した結
果の提示だけが当を得ていたと言える。


●速報性

 この報告を書いている1999年7月初旬においても未だ選挙の最終集計結果が出
ていない、それどころかKPU速報システムにおいてはそのアップデートが終わって
しまったかの様に動かなくなってしまった。
 メディアセンタの速報集計システムも6月24日に集計を終わらせた時点でも80%
には満たない状況であった。

 これらを踏まえて考えれば、どちらのシステムもとても速報と言うにはあまりにも
時間がかかりすぎた。ただし、誰も知り得ない情報をいち早く知らせることを以って
速報と言うならば、KPUシステムは速報の態を成していない。

 メディアセンタの集計が、KPUシステムに比べて早く実施できた理由は第2部で
述べた通りである。今回KPU(総選挙委員会)は、集計結果が通る通り道の確保に失
敗している。更にIFES側がこの通り道を事前に強力に確保した事と、集計システ
ムが2つあることを各選挙管理委員会に完全に知らしめていないことによって、この
失敗を決定的にしてしまった。
 速報集計は素早く迅速に(かつ正確に)行われてこそ役に立つのであるから、この
通り道の確保を明確に出来なかったことはKPUシステムは致命的であった。


●信頼性

 メディアセンタの集計は、PPK(郡選挙管理委員会)からの集計をもとにしてあ
る。KPUはPPS(村役票委員会)で集計された結果が入ってくる。
 どちらも出所は同じであるものの、KPUシステムの方が、人の手を多く経ていな
い情報のため、メディアセンタのものよりは信頼性があると考えるべきだが、今日の
様に、投票からかなりの時間が経過し、リカウントをするしないと言った状況では、
情報の信頼度は薄れる様な気がする。

 やはり情報の信頼性を上げるためには、ある程度の速さが必要なのではないか?



6.今後の展望

 今回の失敗や、上手く行った点を考慮して今後(5年後?)のシステムを検討して
みた。実現が可能かどうかは別として、可能性がある点に留意して見て欲しい。

●将来の社会基盤状況

 インドネシアはきわめて広く、また色々な民族が住んでいる。今後多くの地域紛争
や民族問題が起こるかもしれないが、今回の総選挙にて一応政治が安定し、社会的に
も落ち着きを取り戻し、経済的に豊かになってくれば、紛争等の問題も発生しにくく
なってくるだろう。
 ジャカルタの中央集権と言った問題は早々に解決し難いであろうが、地方への社会
基盤の整備は徐々にでも行われ、公共交通手段や公共通信手段といったものが確立さ
れてくるであろう。
 特に通信手段は重要で、せめてどこの村にいっても1村に電話1台くらいは確保出
来るようになっていなければ、情報の収集という点では様々な支障を来す。

 近年イリジウムやインマルサットと言った、直接に衛星を利用した無線電話があ
る。この様なインフラストラクチュアに多く投資をしなくても容易に入手出来る通信
手段は確実に増えつつある。

 これらは、現在ではまだコスト高ではあるが、将来的には技術の進歩も手伝って、
大幅なコストダウンが図られるであろう。
 少なくとも、今回の選挙に日本から支援品として導入されたSSBのハンディトラ
ンシーバ並みの値段になれば、選挙集計結果を上げるためにその期間だけでも通信事
情の悪い地域に貸与すると言ったことは比較的容易になるのではないか?

 また、インターネットの普及も目覚しく、それぞれの郡の役場辺りにはインター
ネットに接続可能なコンピュータが配備されるのも、そう遠くないのでは…と考え
る。
 特に近年パーソナルコンピュータの値段はずいぶんと安くなっており、インター
ネットによる情報の収集による利益を考えれば、今後はインドネシア国内でもコン
ピュータはかなり普及してくるであろう。
 今回メディアセンタで利用されたパソコン100台余は、是非地方の選挙管理委員
会に回してもらいたいものである。
 実は、大きな声では言えないのだが(とか言って報告書にしっかり書いている
が…)メディアセンタでリクエストした機材の中に、今回全く使われなかった17台
のモデムがある。これと今回利用されたコンピュータをつなげれば直にでもインター
ネットに接続できてしまうわけである。


●ネットワークは不要

 今回はKPU(総選挙委員会)は銀行の既存のネットワークを、メディアセンタの集
計システムもローカルエリアネットワークを用いてデータを入力した。
 ところがいずれの場合もデータはクライアントから中央のサーバに一方的に流れて
行くだけで、その結果(入力された結果)はインターネットもしくはイントラネット
を用いなければ、一般的には確認出来ないと言う状況である。

 また、1箇所からのデータの入力はそれほど時間がかからず、なおかつ頻繁に繋ぎ
直されるものではない。と言うことは、サーバとクライアントが常に線で結ばれてい
るネットワークは必要ないのである。
 ダイヤルアップ接続の様に、必要なときに必要なクライアントがサーバに接続し
て、情報を上げたあとは、接続を切り離してしまえば、ネットワークリソースの節約
にもなるし、セキュリティの問題も発生しない。
 広域のネットワークは、常にその回線が開いたままになっているので、外部からの
進入を受けるのであるが、ダイヤルアップ接続は必要なときにだけ回線を開くので、
接続中以外は外部から全く切断されている。また、接続中も完全に一対一の接続なの
で、外部からの進入を受け付けない。
 また、クライアントからサーバに上げられる情報は、あまり大きな物ではないの
で、接続している時間も極めて短いもので充分だ。

 例えば、電話番号、ログインパスワード、通信プルトコルの三つの点でプロテクト
を掛ければ、MS-Windows98の様な脆弱なOSでもサーバになり得る。


●高価なサーバは不要

 いわゆるKPUシステムのメインコンピュータ "AS400" は、PowerPC
のデュアルプロセッサで稼動している。PowerPCと言えば安価なパソコンで有
名なアップルコンピュータ社のiMACと同じCPUである。実のところメディアセ
ンタの集計システムで使っていたサーバの PentiumII デュアルプロセッサとCPU
の能力としては余り変わらないのである。

 にもかかわらずメモリが3GB等と言う非常識な量が必要なのは何故か?と言え
ば、メインフレームとしての周辺機器を取り仕切り、他の機器やプロセッサと協調を
図るために必要なわけだが、上記の様な理由で、大規模なネットワークが不要になれ
ばこの様な高価な周辺機器を伴う必要がなくなるわけで、今回メディアセンタでデー
タ入力用として使われたクライアント機程度の能力のコンピュータで充分サーバとし
てやって行けるわけである。

 この様な高価なコンピュータを利用せず、安価なコンピュータでシステムを組み、
余った資金でクライアント機を増やす方が、「広域からの情報の収集」と言う点では
有効であろう。


●情報の配信は全てインターネット

 実は今回のシステムは(KPUもメディアセンタも)、その結果を知らしめる手段
としては、集計している現場を除いて、インターネット以外は用意されていなかっ
た。
 その上どちらのシステムも、データをインタネットのサーバに上に定期的にアップ
ロードする方法を取り、オリジナルデータの保護に努めた。
 従って、今後も情報の配信は全てインターネット経由で行えば良い。

 ちなみにKPUのホームページから投票所の訓練マニュアルが見られる。各地方の
選挙管理委員会が、インターネットへ接続することができれば、マニュアル等の配送
をジャカルタから又はKPU(総選挙委員会)が自らが行う必要は無くなるのである。
それぞれの県もしくは郡のレベルで責任を持って、インターネットからの情報を取り
出して、末端の投票所まで管理し情報を送り届ければ良いのである。


●無線機も使える

 上記の提案は全てコンピュータと電話回線を使った場合の話しだが、実は電話回線
以外にも、情報伝達の手段はある。今回援助機材として地方に導入されたSSB無線
機の様なトランシーバもコンピュータのデータ転送に利用できる。TNC(Terminal
Node Controler)と呼ばれる機器を、モデムの様な感じで、無線機とコンピュータの
間に入れて、これでデータの変換(コンピュータのデータから無線機で転送出来る信
号に変換)を行う。

 最近の無線機であれば、トーンスケルチやDTMFスケルチの様な機能を使い、電
話回線以上のセキュリティが保たれる。(ただしデータ転送速度は電話回線に比べて
ずっと遅い)また、送受信に使われる周波数も、プロテクトの一部として使える。



7.最後に...


 今回の派遣は、急に話しが決まり、状況が掴めないうちに任国へ着任する形になっ
たが、JICA事務所の圧倒的なバックアップのお陰で、特に大きな問題も無く直に
任務に就くことが出来た。
 また、実際の活動に入ってからも、数々の配慮のお陰で、なに不自由無く活動に専
念できた。恐らくこれ以上は無い程のサポートであろう。特に資金的なバックアップ
がある状況にあったので、ずいぶんと安心して活動が出来た。活動期間中に特に大き
な出費を行ったわけではないが、後ろ盾があるのと無いのとでは安心感が違う。
 活動中に様々な支援をして頂いたJICA事務所と日本大使館にはここで改めで感
謝の意を表しておく。
 また、活動中に公私共に支援及び指導して頂いた黒田専門家には、お礼の申し述べ
様も無い。


 また、実際に活動を行っていた場所が、人員不足の現場だったので、常に多忙を極
め、文字通り上へ下への大騒ぎであったが、現場での同僚に恵まれて、非常に一体感
ある活動が出来た。
 恐らく小職が一緒に働いていた同僚達は、青年海外協力隊員や他の専門家達の誰と
も接点の無い様な類の人物達であろう。裕福な家庭で育ち、高い水準の教育を受けて
きた故に非常に高いレベルの結果を出せる仕事が出来る面々である。1つ何か頼め
ば、その先までも考えて仕事を進めてくれる、今までの途上国のイメージを全く変え
させてしまうメンバだった。彼等はみな20代の前半と若く、インドネシアの将来の
担い手達なのであろう。
 実は彼らが同僚だったお陰で、今回の多忙を極めた任務を乗り切れたと言っても過
言ではない。


 国際混成組織での活動の難しさを目の当たりにした活動でもあった。IFES内部
のスタッフの関係、インドネシア人と外国人の関係、インドネシア人と中華系インド
ネシア人との関係、IFESとオーストラリア選管との関係、など様々な人間関係が
あり、その上に親子だ、恋人同志だ…となかなかドロドロとした奥の深い対人関係が
あって、上手く行くものもいかなかったり、コミニュケーションが取れていなかった
り、対立して上手く運ばなかったり…となかなか難しいものが多かった。(その点で
はIFESのパーマネントスタッフはこう言った処理が上手い。やはり場慣れしてい
るからなのであろう。)


 今回この様な活動の場が与えられ、日本インドネシア両国の発展に寄与できたのは
光栄の極みである。その上、多くのインドネシア人の友人と知り合える機会が出来た
ことは至上の喜びである。
 また機会があれば、ここインドネシアの地で、短期間では無くじっくりと活動出来
ることがあれば幸いである。

 現在の小職の勤務先は、ここインドネシアにも多く顧客を抱えている。またいつか
将来にこの地を訪れる機会もあるだろう。そのときに今回の選挙支援の協力がどの様
な形で実を結んでいるのか楽しみである。